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『猛女とよばれた淑女』=斎藤由香さんが新刊発売=「父と弓場農場訪れたい」

ニッケイ新聞 2008年2月21日付け

 ブラジル日本移民の初期移住の様子を描いた大河小説『輝ける碧き空の下で』(日本文学大賞)で有名な作家・北杜夫さんの娘で、昨年三月に初来伯した斎藤由香さんが、この二十二日に、日本で新作『猛女とよばれた淑女―祖母・齋藤輝子の生き方―』(新潮社、千四百円)を刊行する。昨年、小説新潮に集中連載されたもので、祖父である歌人・齋藤茂吉の妻・輝子の波乱に満ちた誇り高い生涯を、孫娘の独自の視点から描いた評伝だ。
 サントリーの健康食品事業部に勤務する由香さんは昨年来、週刊新潮の人気コラム「窓際OL」でも、何度も百周年に訪れたい旨を書いている。今回の新刊発行に関して連絡を取った際も、次のようなメッセージを寄せた。
 「私は昨年訪伯して以来、すっかりブラジルファンになりました。アタマの中はブラジルのことでいっぱいで、毎日、父には、『今年はサンパウロに行くからね!』と言っております。父は、『輝ける蒼き空の下で』の執筆のために、二回、弓場農場を訪れているので、是非、父と弓場農場を訪れたいのです」。
 今回の新作は、祖父・斎藤茂吉の妻(北杜夫の母)にして明治の気骨を持った猛女、輝子の波乱に満ちた生涯を描いた。八十一歳でエジプト、八十二歳でアラビア半島、八十五歳にしてジンバブエを訪れたのはそのほんの一端。八十九歳で亡くなるまでに海外渡航数はなんと九十七回、距離にして地球を三十六周分も旅行した。
 由香さんは、「茂吉との夫婦仲も最悪の上に二人の娘も逆縁で亡くしましたが、鬱病にもならず、七十九歳で南極、八十歳でエベレスト…と、八十九歳で亡くなるまで、世界百八カ国を旅しました。鬱々として元気のない方、どんより気分の方々に読んでいただき、『明治生まれのお婆ちゃんがこんなに変わっていたんだ。どんなにつらいことがあっても鬱病にならず、人間は元気に生きていくことができるのだ』と思って頂ければ幸いです」とメールで伝えてきた。
 斎藤さんはOLのかたわら、単行本『窓際OL トホホな朝ウフフの夜』『窓際OL 会社はいつもてんやわんや』(共に新潮社)などの〃窓際OL〃シリーズを執筆している。

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