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三味線、長唄指導の杉浦さん=体が続く限り、続けたい

ニッケイ新聞 2008年2月28日付け

 普段は碁や将棋で賑わう声が聞こえてくる地下鉄アナ・ローザ駅近くの日本棋院南米本部会館。時折、心地良い長唄と優雅な三味線の音が聞こえてくる。同所で練習に励んでいるのは、「和の会」(石田ひろ子代表)だ。
 練習を行っているのは、十三人と少ないながらも、最近はとみに活気付いている。というのも、日本から杉浦和子さん(65、東京都出身)が指導のために来伯しているからだ。
 和の会は九三年頃に発足し、活動を始めた。普段は自分たちで練習しあって腕を磨いている。杉浦さんが来伯した時は細かいところの指導を受けている。
 約五十年間三味線を続けている杉浦さんは、九三年に夫の仕事の関係でブラジルを訪れた。
 来伯当時は長唄や三味線を教えていなかったが、九五年に「日本人なのに日本の文化を知らないから、しっかりしたことを知りたい」と駐在員の家族から相談があり、三味線を教え始めることに。九九年に帰国するまで自宅で教えつづけた。
 同会では、三味線は基本的に日本製を使い、杉浦さんが日本から持ってきたり、皮の張り替えや修理を行ったりするために日本に持ち帰っているという。
 代表の石田さんは日本で免状を受け、名取りを襲名しているほどの腕の持ち主。今年八月には八回目の発表会を、栃木県人会で開催する予定。最近は専ら発表会のために練習を積んでいる。
 杉浦さんは現在も年に二回、指導のために来伯している。滞在期間は毎回一カ月前後。友人宅などに泊り込んで指導だけをしているという。今回は五日に来伯し、二十九日に離伯する。
 「活動の基本は日本なので、ブラジルで生活することは考えていない」と話す杉浦さん。「次はいつ来てくれるの、ってみんなが待ってくれているし、協力してくれているので自分からは放りだせない」と続ける理由を語る。さらに、「生徒は自分たちの子供みたい。家族に支障がなく、自分の体が続く限り、続けていきたい」と希望を語った。

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