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愛知・保見団地でシンポ=「外国人児童生徒の教育」(上)=100人以上が熱心に参加=3NPOが呼びかけ主催

ニッケイ新聞 2008年3月5日付け

 【愛知県豊田市発】人口九千人のうち、半数近くを外国人住民が占める愛知県豊田市保見ヶ丘。その大半が日系ブラジル人だ。そこには、来年度の新入生の六七%を外国人児童が占める予定の小学校まであり、「外国人児童生徒の教育」は、地元全体の課題ともいえる状況になってきている。そんななか、NPO法人保見ヶ丘国際交流センター(楓原和子代表)、トルシーダ(伊東淨江代表)、子どもの国(井村美穂代表)が共催した教育シンポジウムが、二月十七日、保見町の保見交流館のホールで行われ、真剣な議論が交わされた。(秋山郁美記者)
 団地内には、外国の子供たちを支援するNPO法人が四つある。それぞれの活動内容は、ブラジル学校へ通う児童・生徒への日本語指導、いずれの学校へも通っていない子の居場所作り、小学校の宿題補助、ポ語指導など多少の違いや住み分けはあるものの、保見の子供たちを支援するという目的は変わらない。
 このうち、普段同じ建物で時間をずらして活動を行っている三つのNPO法人が共催し、『教育シンポジウム 保見の子どもたちの未来を考える―外国人児童生徒とともに学ぶ中から生まれること―』という討論会が開催された。
 これまでに三度のプレセミナーを経て、回を重ねるごとに遠方からの参加者が増え、当日は百人を超える参加者でいっぱいになり、準備の丹念さと注目度が窺えた。
 前半は教育ジャーナリスト、増田ユリヤさんの講演。フィンランドやスウェーデン、ドイツなど移民が多い国における教育が、写真とともに紹介された。日本の学校とは根底から違う教育観念や、さらに多国籍で複雑な移民問題への対応に、参加者はしきりに頷いたりメモを取ったりしていた。
 後半は子供、親、地域住民、学校の先生の代表によるパネルディスカッションが行われた。
 保護者の代表として、三人の子を持つ島田エジソンさんの体験談や意見が紹介され、「普通でいい」という言葉を真に受け、入学式にジャージで登校させてしまった失敗談、進学にかかる金銭問題など苦い体験が話された。
 「保見は便利な場所だが、甘えやすい。乗り越える力がなくなってしまう」という自戒ともとれる感想が伝えられ、「子供のためには親がしっかりしなくてはいけない」と結んだ。
 日本人の親の代表として、小学校で国際協力委員という外国人も含めた保護者の組合に参加する磯部真由美さんが話をした。「PTAや国際協力委員の会合にも参加が少ない外国人の親に対し、以前はまったく意識もしていなかったが、委員を始めて彼らの大変さや、子を愛する気持ちの普遍性を知った」という。
 欧米の移民政策に学ぶ点が多いのはもちろんだが、本来ならこの件に関して、最も身近な〃先進国〃はブラジルではないか。
 日系二世の多くが有名大学に進学して、医師や弁護士、官僚になって社会上昇を果たしてきたが、ここでは高校にいく生徒すら少ないのが現状だ。移住地に育った若者の多くはバイリンガルになり、日本進出企業に就職したり、語学力を活かした職業に就いたりした。
 かつて日本移民が体当たりで培ってきたノウハウは、残念ながら日本の日系コミュニティには継承されていないようだ。(つづく)

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