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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2008年3月7日付け

 去る一日のNHKテレビ土曜ドラマ「刑事の現場(1)苦い逮捕」は、刑事ものであったが、デカセギをドラマの背景に置いていて面白かった。相当にデカセギ日系人のことを調べて台本を書いただろうと推察できた。デカセギに対して〃同情的〃だったのも印象的だった▼印象的といえば、デカセギたちが、日本の製造業(たとえそれが弁当製造であっても)にとって、もはや欠くことができない存在であることをドラマの製作者たちは認識していた▼刑事の現場は、ブラジル人居住者が圧倒的に多い愛知県内の某団地で発生した傷害事件。弁当製造工場につとめる、勤務成績のあまりよくない中年日本人女性がクビになった。女性は、ブラジル人たちが工場にたくさん入り込んだせいだ、と逆恨みする。そして日系人にも親身な、過去に免許を剥奪された、もぐり医師を脅迫する。それを知った、恩に着るブラジル人青年が女性を責め、力余ってケガをさせる。刑事たちは聞き込みを続け、その青年の逮捕に行き着く▼ドラマは、なぜブラジル人たちが、日本に働きに来なければならないか、を丹念に描いている。ブラジルに仕事がなく、ブラジル人たちが永住を望み、いかに日本語を勉強して日本社会に溶け込もうとしているかも過不足なく紹介している▼もっとこうしたドラマをつくってほしいと思った。NHKのドラマの視聴率は何パーセントかわからないが、なんといっても理解するのに手っ取り早い。ドラマがフィクションだとしても。(神)

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