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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2011年8月4日付け

 1日に四季があるような最近のサンパウロの天候。「ブラジルは暑いのでしょう?」と決めてかかる日本からの連絡はさらりとかわし、フェイラでも季節を感じるのに忙しい。そろそろ終わりだろう、アーティチョークや柿、そのなかでもパラナ松の実、ピニョンを見るとしみじみとしてしまう▼来伯当時、6月祭りで食べた。「ローソクみたい…」という印象があり、さほど感心しなかったのだが、最近知人が一袋くれたのを食べて気に入った。何事も決めてかかるのはよくない。さっそく炊き込みごはんや茶碗蒸しなどで、もっちりとした食感を楽しんだ▼しかし、これは代用品としての楽しみ方だろう。つまりクリや銀杏、ユリの根などをイメージしたわけだ。勝手に「かつて移民もこれで懐かしんだのでは…」と戦前移民数人に聞いてみたが、あまり要領は得なかった。リオ州ヴィスコンデ・デ・マウアー、サンタ・カタリーナ州ラージェスで「ピニョン祭り」があり、前者では牛の筋肉と煮込んだものが名物料理だとか▼この実がなるのは、独特の形状で知られるパラナ松。太古の昔にタイムスリップした気分になる。パラナ松の作品もある画家の田中慎二さんによれば、サンタ・カタリーナ以南の風景がよく、「特にリオ・グランデの広大な原野に点在するパラナ松の景観は最高」だとか。サンパウロではカンポス・ド・ジョルドンとミナス州境のモンテ・ベルジで群生しており、画家半田知雄さんも訪れたという▼ポ語では「アラウカリア」。台所にあと一握りのピニョンがあったような。今日読者から頂いた青ジソと、冬の一品を考えてみたい。(剛)

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