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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2008年3月26日付け

 最近、コロニアにも少し〃上陸〃してきた「KY式」日本語。いや、まだ日本語として認められていない若者言葉、というべきか。日本では、出版社の編集者、大学の言語学の先生、現役高校生などの間で、これは日本語なのか、という点で意見が分かれたらしい▼ある出版社が新書「KY式日本語」を発売したところ、二週間で二十万部という大ヒットになったという。この言葉は、ローマ字略語である▼例えば「KY」は「空気が読めない」という意味だ。用法は「あのおじさん、KYだから、付き合いにくいよネ」。「IT」はもちろん「情報技術」の意味だが、女子高校生たちは「アイス、食べたい!」の意味で使う。「めっちゃ寒いけど、わたしはIT」というふうにだ。受験生が「おまえ、大学、どうする」と言いたいときに「オレは浪人しないつもり。で、ODD?」▼もうついていけない、という人も多いだろう。日本では毎年新造語がいくつか現れる。気のきいたものは、生き残り、公認され、広辞苑(岩波書店)に採録されたりする。「KY式」はどうであろうか。あくまで、若者たちの間の一過性的な言葉で、おそらく将来残らないと見るのが妥当か。現在、これを容認している大人たちも、現代社会の言語環境を反映しているだけ、と素っ気ない▼こういう言葉に戸惑うことなしにおれるコロニアの日本人たちは、ある意味では幸せなのかもしれない。少なくとも若者たちに「KYだ」といわれない分マシであろう。(神)

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