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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2008年4月25日付け

 日系社会では勝ち負け紛争に関してタブーとされてきた部分が多かった。それゆえジャーナリスト、ジョルジ・オクバロさん(二世、61)が十五日に聖市で行った講演は興味深かった▼著名な二世が日系人としての誇りを持って、ポ語で「父は臣道連盟だった」というところから語り始める講演は実にインパクトがある。二世の多くは理系や法曹界で出世したので彼のようなジャーナリストは多くない▼昨年オクバロさんが出版したポ語著書『O Sudito: Banzai Massateru(臣民=万歳、正輝)』の視点は、臣道連盟の一員だった父の生い立ちを軸に、当時の日本移民の一般像、〃臣民〃としての姿を描こうとするものだ▼フェルナンド・モラエス著のポ語『Coracoes Sujos』が〇〇年にベストセラーになったことで〃パンドラの箱〃が開いた。非日系人が日本移民による暗殺テロを赤裸々に描いたことで、逆に「そうではない」という思いが子孫たる日系人の中に膨らんだ▼よくある「特行隊による暗殺テロ」に関する記述や、負け組有名人に焦点を当てたものでは、当時コロニアの八割を占めた勝ち組という大衆の本当の気持ちをすくい取ることはできないと、この講演を聴き、再確認した。「父は狂信的な愛国者ではない、ただの理性的な臣民だった」とのメッセージが心に残った▼誰が「臣道連盟=狂信的な集団」というイメージを作ろうとしたのか、なぜ「自分は勝ち組だった」と言いづらい雰囲気がコロニアに作られたのか。当時大半を占めていたはずの「大衆」の想いは、まだ十分に移民史に書き残されていないと痛感した。(深)

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