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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2011年9月1日付け

 被弾して横たわり口から泡をふく瀕死の容疑者に対し、そのリオの警官は「そうやってのたうち回っていろ、売女の子め!」と侮蔑の言葉を投げつけた。横に倒れている16歳の少年にも、「お前、まだ死んでないのか? 運が良かったな。搬送中に死ぬといい」と言い放った様子を収録したビデオが流出し、問題化していると8月27日付け2面にあった。まるで犯罪映画の一シーンのようだ▼人気映画『トロッパ・デ・エリーチ2』が公開された直後、たまたま入手したその海賊版DVDには別の映像が入っていた。リオのファベーラを描いた実録モノで、警察に撃たれた麻薬密売人が病院に運び込まれるシーンや、まったく罪悪感を持たない犯罪者の生の言葉が収録されており、作り物の映画にはない、吐き気がするぐらい重たい現実を感じさせられた▼全伯で毎週3〜4件のリンチ殺人が行われており、この50年間で延べ50万人が私刑に参加したとの記事(08年2月17日付けエスタード紙)を読んだことがある。公権力が頼りにならないから、民衆が犯罪者を直接処罰することが当たり前に行われている戦慄する現状を暴いた学術著作の紹介だった。これは民衆による私刑だが、冒頭の逸話は、司法制度を信用しない警察官による私刑だ。共に法治国家の限界を感じさせるものであり、コインの裏表といえる▼地方の日系集団地では、日系人ばかりを狙う、手におえない犯罪者に対し、警察官に裏で頼んで〃処理〃してもらうことがままあると聞く。近年日本では「リオ五輪好景気」ばかりが報じられるがこんな現実も直視する必要がある。(深)

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