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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2008年6月10日付け

 長く激しい闘いであったし、ときには興奮の余りか相手候補を「謗り」―政策論を飛び越えた議論になったりと大いに賑やかな予備選に国民は沸きに沸く。こんな民主党の候補選びもやっとけりが着き黒人のオバマ氏が勝利した。ヒラリ―・クリントン上議は撤退表明したが、1800万人から集めた票はオバマ氏を上回る。これは民主党の予備選史上、最大の獲得票数であることを重く見たい▼恐らく、これほどの激戦は初めてではなかろうか。選挙資金も莫大でありオバマ氏は2億7000万ドル、クリントン上議が2億2000万ドルと、これもアメリカの政治史上では最高である。いや、候補を選ぶ運動でこれほどの巨額な資金が掛かる国はどこにもないのではないか。もし―このような金権なら11月の大統領選挙を入れると5億ドルや7億ドルもの天文学的な金額になるのでは―と、いささか気にもなる▼この予備選がこんなに大騒ぎになったのは、両候補の政策論争というよりも黒人が大統領になるのか、それとも初の女性かへの関心が高かったからに他なるまい。ケニア人の父と白人を母にするオバマ氏は混血だが、「変化」を掲げての言動には光り輝くものがある。クリントン氏は大統領夫人であり、100人の弁護士にも選ばれ政治的な見識も高い▼だが―オバマ氏が本選挙でも勝てるのか?となると、これはまた別の話になる。選挙は投票箱を開けるまではわからない―とされるけれども、共和党のマケイン候補が「勝つ」の見方をする専門家が多いのも事実。オバマ大統領の誕生には、まだまだ超えるべき茨の道が幾つもある。(遯)

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