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日伯農業シンポ=新たな学術交流を模索=「日本の貢献2百、3百周年へ継続を」=両国研究者が議論重ねる

ニッケイ新聞 2008年6月12日付け

 サンパウロ大学(USP)、サンパウロ州立大学(UNESP)、カンピーナス州立大学(UNICAMP)が共催する日伯シンポジウム「アグロネゴシオ(農業関連ビジネス)への貢献」が九~十日の二日間、サンパウロ市のメモリアル・ダ・アメリカ・ラチーナで開催され、日本からも四大学から教授ら約十人が駆け付けた。
 百人ほど集まった初日午前九時の開会式で、マルコス・マカリUNESP学長は「日本移民の貢献は特別すべきものであり、このまま二百周年、三百周年と続けていって欲しい。ブラジルは食糧に関して、世界的な責任を背負っている」との期待をのべた。
 百周年記念協会の上原幸啓理事長、同メモリアルのフェルナンド・レッサ会長が祝辞をのべた。
 第一部では、ロベルト・ロドリゲス元農務大臣が基調演説し、「バイオエタノール生産で世界に地政学的転換をもたらそう」との提言を行った。昨年来の石油価格高騰、化石燃料がいつかなくなるという不安に触れ、サトウキビによるバイオ燃料は世界のエネルギー事情に安定性をもたらすとの考えをのべた。
 さらに、熱帯原産のサトウキビは貧困地域が多い南半球諸国にこそ栽培が適しており、「日伯が協力して普及することで世界の貧富差を縮めることができる」と力強く提言した。「政治的な繋がりは時の政権で移り変わるが、学術はそれに左右されない。百周年を機会に日伯の交流を深めてほしい」。
 日本の農水省の吉村馨(かおる)総括審議官からのメッセージを、在聖総領事館の丸橋次郎首席領事が代読した。
 まず、〇六年に二十四年ぶりとなる中川昭一農水相(当時)訪伯以来、〇七年に故・松岡利勝農水相(当時)、今年五月には若林正俊農水相が連続して来伯していることに触れ、さらにセラード開発に日本政府から五億六千万ドルが投入され、これをキッカケとしてブラジルが世界第二位の大豆生産国になった歴史を振り返った。ブラジルを通してアジア、アフリカなどを支援する「南南協力」のあり方を検討している、と締めくくった。
 さらに東京農工大の笹尾彰副学長が「日本の農業機械化の現状と動向」について講演した。
 この後「輸出戦略」「デカセギの影響」「自然資源の持続的選択肢」「日本移民のブラジル農業への貢献」など六部に分かれて議論された。
 日本からは農水省(清水純一総括上席研究官)、東京大学(生源寺真一教授、永田信教授ととし子夫人)、筑波大学(田瀬則雄教授、増田美砂教授)、東京農工大(小畑秀文学長、笹尾副学長、服部順昭教授、山田祐彰講師)、岐阜大(守富寛教授)から計十二人が参加した。
 九月には日本側で今回の続きとなるシンポジウムが行われる予定。

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