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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2008年6月13日付け

 「たかが団体舞踊」ではない。「団体舞踊こそ、わが生甲斐」である。日本移民百周年祭典は、コロニアの団体舞踊愛好者に、いい〃舞台〃を与えてくれている。近頃、中高年の知り合い同士が電話で会話を交わすと「あなたは出ないの?」の問いが挿入されるそうだ。踊らない人にとっても関心事なのである▼来る二十一日、アニエンビー・サンボードロモにおける祭典アトラクションの盆踊り団、百周年記念踊り団は、出場グループのなかで最大規模である。踊り手の中に、知り合いの顔が必ず見出されるだろう。電話であいさつ代わりにされるのもうなづける▼さきに厚生ホームで行なわれたフェスタ・ジュニーナにも、元気はつらつとした「おばさん」たちのグループがいた。ホーム最上階の更衣室で準備中のときから、興奮気味であった。舞台のあるサロン脇で待機中、知り合いに出会うと、白い顔が「ハーイ、応援してネ」と若々しい声▼日本舞踊には、もちろん盆踊りのような土地に根付いた民謡踊りも含めて、振りに込められた意味があると聞く。コロニアの中高年の愛好者たちの、その意味の理解度はさておき、完全に「今の楽しみ」「人との付き合い」のために、舞踊を大事にしているようだ▼子育てを終え、中高年の域に入ってから始めた人が多い。例えば、その道を極めよう、とかはないのだから、それはそれでいいのだ。ともあれ、一世女性たちにとっては、最後ともいうべき〃大舞台〃になるだろう。(神)

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