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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2008年6月26日付け

 サンパウロ市百年祭では盛大かつダイナミックな式典を挙行できた。パラナ州各地も大規模な日本公園・広場を残すことができた。これらは間違いなく大成果だ。だが、今からでも真剣に考えるべきは、何世になっても続くような永続的な文化継承・普及の仕組み作りだ▼サンパウロ市とローランジア双方の式典を直接に見た感想からすると、出し物の見応えに関してはサンパウロ市に軍配はあがるが、パラナ州の七万人もの動員力には瞠目させられた▼全日系人口の七割を占めるサンパウロ州より、たった一割のパラナ州の団結力の成果だ。この結束を維持してこられたのは、リーガ・アリアンサという強固な全州組織という〃仕組み〃があったからだ。このような組織作りを謙虚に学ぶ必要がある▼従来のカラオケ、日本食に加え、この十年で和太鼓、YOSAKOIソーラン、マンガ・アニメなど多くの日本文化普及の〃秘密兵器〃ともいえるものが現れてきた。これらをいかに上手に使って、組織力と動員力を増すかが文化伝承の鍵だ▼百周年を通して、ブラジル社会は日系人に日本文化を継承することを求めていると痛感した。違いがあるから価値がある、エキゾチックな文化が見事に社会に統合されているからブラジル自体の価値も高まる。そんな論調が目立った▼百周年協会の上原幸啓理事長は、一連の行事の中で日系人のブラジル社会への統合を強調するあいさつに終始したが、ブラジル要人の言葉からはむしろ、それがすでに既成事実として認識されていることが感じられた▼より多くの子孫が日系であることに誇りを持ち、日系固有の特性を調和した形で残せるかが今後の課題だ。(深)

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