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『笑って楽しい生活を』=国境なき芸能団=賑わったサンパウロ市公演=老ク連を笑いの渦に

ニッケイ新聞 2008年7月8日付け

 久し振りに心の底から大笑いした――。七日午前十一時から、老ク連で行われた、国境なき芸能団(笑福亭鶴笑団長)の公演を観賞した村上ことじさん(64、広島)は、冒頭のように語った。落語を中心に約二時間の公演を行っている同芸能団。最終公演を終えた鶴笑団長は「来伯前は心配だったけど、大成功を収めることができて良かった」と充実した様子で話した。また、鶴笑団長は今回の来伯で、「ストリートチルドレン芸術祭」に参加していた少女イネス・ダ・シルバさん(12)との出会いを果たした。
 同芸能団は、「地上に平和を、人々に笑顔を」をスローガンに各地で公演活動を行っている。今回は、百周年を記念して行われた。
 一行は先月二十八日に来伯し、パラナ州のロンドリーナ、クリチーバ、マリンガ、ウムアラマの五カ所で公演。最終公演となった老ク連での公演会は百人以上が訪れ、会場は一杯になった。
 同芸能団は、鶴笑団長をはじめ、団員の桂あやめさん、阪野登さん、お茶子の入谷なごみさん、記録音曲の松村千賀子さん、コーディネーターの松谷廣志さんの六人。
 五十嵐司老ク連副会長のあいさつに続いて、公演が始まった。
 最初に鶴笑団長が、落語や扇子などの小道具を説明。続いて行なった紙切り絵で、馬やミッキーマウスなどを見事に作り上げ、会場からは拍手喝采が湧き上がった。観客の村上ことじさんの顔を切り絵で作り、会場を盛上げる場面も。
 桂団員は、講談は歴史に基づいたものが多く、落語は空想の話、などと講談と落語の違いを話した。落語「じゅげむじゅげむ」にポルトガル語を交ぜながら話し、会場は笑いの渦に包まれた。その後、阪野団員の手品で第一幕が終了。
 第二幕では、鶴笑団長が侍の格好をして登場し、体を張った芸で会場の笑いを誘った。また、日本語が分からない人にも分かるように、との考えから、身体表現だけで芸を披露。
 続いて、芸者の格好をした桂団員がバラライカを持って登場。情緒ある都々逸を面白おかしく唄い、会場からは、惜しみない拍手が送られた。
 最後に、日本の大道芸の一つとして用いられる南京玉すだれを使用して、鳥居や東京タワー、阿弥陀如来の後光、オリンピックの輪、イグアスの滝をなど見せ、鶴笑団長は「笑って楽しい生活を。日本、ブラジルバンザイ」と喜びながら話し、来場者と記念撮影を行い、公演会は無事終了した。
 村上さんは「心の底から笑ったのは久し振りだった。今日は本当に来て良かった。(切り絵は)最高のプレゼントになった」と興奮覚めやらぬ様子で語った。夫の村上佳和さん(67、広島)は「言葉に深みのある伝統芸能をみることができたことに満足している」と満足した様子で話した。

芸能団の鶴笑団長=伯少女との出会い

 「ストリートチルドレン芸術祭」活動は、日本の若者グループと熱海市小嵐中学校が主催して行なっているもので、毎年各界のこころある十二人の選者によって、世界のストリートチルドレンが描いた絵を一枚選び、カレンダーを作っている。
 選者の一人に、鶴笑団長がいた。鶴笑団長は、リオに住んでいる元ストリートチルドレンのイリスさんの絵を選んだ。
 今回のサンパウロ市公演にあたり、団長はイリスさんと家族を招待。母親のクレイア・サボイ・ダ・シルバさん(41)、ストリートチルドレン保護施設のアナ・マルシーナ・マシャード園長と三人で老ク連を訪れ、ブラジルでの出会いを果たした。
 初めて顔を会わせたイリスさんは「言葉は分からなかったが、本当に楽しめた。会えて良かった」と嬉しそうに感想を語った。
 「全ての作品が良かった。四百点あるなかで、最終的に彼女の作品が残った」と話す鶴笑団長。「今回選ばれたことで、前向きに生きていけるようになった、と聞いたので本当に良かった」と嬉しそうに話した。

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