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歌で綴る激動の移民百年=日本人の心の歌=コロニア歌手50人が熱唱=音楽界先駆者7人を顕彰=ブラジルに感謝込め「アクアレラ・ド・ブラジル」

ニッケイ新聞 2008年8月20日付け

 今年第九回目を迎えるチャリティーショー「日本人の心の歌」(中谷レナット実行委員長=同実行委員会、ニッケイ新聞の共催)が十七日午前十時から文協大講堂で開かれた。今年はブラジル日本移民百周年記念「歌で綴る 激動の移民百年」と題し、日系コロニアの音楽界の先駆者七人が特別表彰され、初めてブラジルの曲も披露された。終始満員だった会場は立ち見客が出るほどで、拍手や声援が絶えない熱い六時間半となった。
 「この曲は昭和五十二年発売当時は全く売れず…しかし」などと白いジャケットに蝶ネクタイ姿の道康二さんが歌の歴史を会場に語りかけるように話すと、ドレス姿の井川ルシア悦子さんが歌い手を紹介。「ザ・フレンズ」楽団十四人の演奏が始まると、歌手がステージへ姿を現す。
 趣向を凝らした演出に、観客らは引き込まれるようにして各演奏に聞き入った。全伯・サンパウロ州のカラオケ大会で優勝経験のある五十人は、自慢の歌声で情感たっぷりに歌い、客席からは間奏ごとに自然と拍手が沸き起こった。
 会場は一緒に口ずさむ人、手拍子する人、身を乗り出して聞き入る人。それぞれが歌とともに昔の思い出を蘇らせているようだった。
 本紙読者の投票で選ばれた名曲五十四曲で一曲目を飾った「荒城の月」は、日系人の間で圧倒的な人気を誇り毎年必ず選ばれる。この曲を聞き、「日本を思い出して熱くなってしまった」と二十代で渡伯したという坂本龍男さん(76、鳥取)は語った。
 「大和魂の鎮魂歌」と紹介された「群青」を熱唱したのは、谷川セルジオさん。初めて歌詞の意味を知ったときは胸が詰まって声が出なかったという。三千の大和魂を想像し涙を流しながら雰囲気たっぷりに熱唱した。
 また花柳龍千多さんや丹下セツ子さんらによって日本舞踊も披露され、観客の目を楽しませた。
 特別表彰では、一九五二年第一回全伯のど自慢大会優勝者の鎌田恵美子さんや第二回優勝者の大谷パウロさん、保坂恵美子さん、羽田宗義さん、阿部洋子さん、小野寺七郎さん、蛯原忠男さんの七人が、コロニア音楽界に貢献した先駆者としてオメナージェンされた。
 当時〃コロニアの歌姫〃と言われた鎌田さん(79、徳島)は「(表彰され)びっくりしました。日本を想いこれからも歌い続けたい」と話した。毎年同ショーに参加し今年は「君の名は」を熱唱。「映画のシーンや海の果てを想像しながら気持ちを込めて歌った」と話した。
 百周年を記念して初めて伯曲「アクアレラ・ド・ブラジル」が二世初のプロ歌手である阿部洋子さん(66)によって歌われた。日本人移民を受け入れてくれたブラジルへの感謝を込めて選ばれたこの曲は、道さんによれば移民船の赤道祭でも歌われていたという。
 バイアーナの衣装で腰を振る阿部さんの明るい歌声に合わせ、観客全員はネオン棒を振りラテンの雰囲気に包まれた。
 そして出演者全員が舞台に立ち「川の流れのように」の大合唱でフィナーレを迎えた。出演者の中には感極まって涙を流す姿も見られ、抱き合う姿もあった。
 ショー後、司会を務め副実行委員長の道さんは、「会場と気持ちを共有できたね」と興奮が冷めぬ様子で笑顔で話していた。
 なお、収益はこどものそのに寄付された。

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