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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2008年9月17日付け

 歴史上、今ほど世界が緊密につながっている時代はない。米リーマン証券破綻による世界の証券市場のドミノ現象は、十六日午後現在でまだ続いている▼日欧米の不況にもめげず、ブラジル経済の国内総生産が六%を越える成長の見通しとの発表が先日あったばかり。下半期に関しても、レアル高により輸入が順調に伸び、不動産はじめ国内需要が旺盛で、経済は拡大基調にあるとの観測がある▼ここ数年来、特に昨年の米サブプライム危機以来、伯米関係が大きく様変わりしている。十五日付けアジェンシア・エスタード記事によれば、ブラジル現地会社から米国本社のへの利益送金は、三月までの一年間で五〇%増と過去最高を記録した。これによりブラジルは、米国への送金額で、日本、中国、ロシア、インドすらを越えたという。レアル高がこの傾向に拍車を掛けている。同記事によれば、この傾向は今後も続くと見られている▼サンパウロ市証券市場も連日下落するなど金融関係での痛手は少なくない。ただし、経済専門家筋には比較的楽観視する向きが多いようだ。ジャパンデスクの高山直巳代表も「昔のブラジルなら、すぐに国際市場の混乱に巻き込まれたが、現在は実態経済が堅調であり基盤が底堅い」と強調する。原油や鉄鉱石などの資源価格が上昇しても、通常の先進国と違ってブラジルにとっては、むしろ朗報だったりする▼ブラジルで生み出された利益が世界の経済センター米国の一端を支える。これは一極集中経済から多極化への流れの一端との指摘も聞かれる。金融危機の裏では、新しい世界経済体制への胎動が始まっているのかもしれない。ブラジルがその一極であってほしい。 (深)

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