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海外日系新聞協会 共同編集企画「年金問題・海外からの声」―どうなる私たちの年金―(4・終) バンクーバー新報(カナダ)=カナダ=日・加社会保障協定に深い関心=説明会に約180人が出席

ニッケイ新聞 2008年9月18日付け

掛け捨てになった年金

 カナダでは、日・加社会保障協定が三月一日より発効となった。年金保険料を日本とカナダへ二重払いしている派遣、一時就労の日本人。日本での年金保険料を掛け捨てにしたまま、受給をあきらめていた移住者たち。同協定は、これらの問題解決につながると、現地日系社会でも深い関心を示す人は多い。
 過去十年にわたって年金について問い合わせてきたカナダ在住四十年の水本正雄さんは、協定発効間近の二月、本紙に投稿を寄せた。(以下は抜粋)
「私の場合は二十五年の受給資格期間を満たす前にカナダ市民権を取得し、その結果、日本国籍を喪失いたしました。日本で働いて支払った五年分の保険料(厚生年金)に対する年金を六十七歳の今でも全く受給していません」。
「外国に移住した者がその国で現地生まれの人たちや他の国からの移住者たちと互角に競争するためには、どうしてもその国の市民権を取得する必要が生じます。私はカナダの公務員になるために市民権を取得いたしました。市民権取得により、年金受給資格を消失した人もおられるかと思います」。

総領事館主催の説明会

 在バンクーバー日本国総領事館主催の説明会には午前、午後の部に会場満席の九十人ずつが出席。日本の社会保険庁から三人の専門官が来加。カナダ連邦政府社会開発省のスタッフも参加し、カナダからの申請方法などを説明した。
「協定発効後は、日本の年金加入期間だけでは二十五年を満たさない場合に、カナダ年金制度CPPの加入期間(一九五二年以降)を重複しない限りにおいて通算することができるようになりました。二十五年の受給資格期間を満たしていれば、外国籍になっても年金は受け取れます」との発表は、移住者にとって朗報である。ただ、日本国籍の人にくらべ、いつの時点まで繰り上げての受給開始になるのかは、現時点でははっきりしていないと水本さんは話す。
 質疑応答では「日本国籍を有するが日本に住所はない」「日本を出国した証明はどこで入手できるか」「国民年金に任意加入とはどういうことか」などの質問が上がった。参加者の中からは、説明会の内容の多くが、企業からの派遣者向けであったと感じたという声も聞かれた。

さらなる問題点

 「日本ではすでに、基礎年金番号が発行され、統一された。日本での年金記録はカナダでは確認できないので、社会保険事務所に問い合わせ、過去にさかのぼって調べ、加入期間を確認する必要がある」との発表に、まゆをひそめる人も多かった。カナダで生まれ、日本で育ち再びカナダに戻った帰加二世のシニアの中には、日本で就労し、公的年金制度に加入していた人もいるが「申請方法が面倒だ。どうせ少額だろう」と、受給をあきらめる人も多い。
 水本さんは連邦政府サービスカナダを通して日本の社会保険庁へ申請したが、何の連絡もないため、直接日本に電話をして調べてもらった。その結果、日本から除籍謄本を取り寄せ、書類を添えて日本へ郵送するよう指示された。日本国籍の妻は総領事館発行の在留証明が必要と言われた。
 ようやく発効された同協定だが、より多くの人が申請できるよう、申請方法の簡素化、コミュニケーション手段など、さらなる改善が必要のようだ。(バンクーバー新報・ルイーズ阿久沢)

写真=在バンクーバー日本国総領事館での説明会

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