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海外日系新聞協会 共同編集企画=「年金問題・海外からの声」―どうなる私たちの年金―

ニッケイ新聞 2008年9月13日付け

 日本国外の邦字メディアでつくる海外日系新聞放送協会は今年、加盟各社を対象とした共同編集企画を実施した。この企画はある共通のテーマについて、加盟各社が各国の事情を紹介するもの。今回は「年金問題・海外からの声」をテーマに、日本でも大きな話題になった年金問題を取り上げ、日米タイムス(米国サンフランシスコ)、らぷらた報知(アルゼンチン)、バンクーバー新報(カナダ)、ニッケイ新聞の四社が参加した。日本の年金問題を各国日系社会はどのように見つめ、またどのような問題が起きているのか。四回にわたり紹介する。

(1) ブラジル=年金特別便の〃不親切〃=在外日系人への配慮なし

 昨年、社会問題に発展した五千万件にも及ぶ「消えた年金記録問題」の解決に向けて、社会保険庁が国内外に一斉送付した年金特別便が、逆に不安をかきたてる材料になっている。ブラジル在住の年金加入者にも今年初めから少しずつ届き、六月ごろにかけて大量に送られてきたが、その書類一式は日本在住の年金加入者を前提にした内容で、日本語がわからないデカセギ就労経験のある日系人などからは困惑の声があがっている。日本の厚生労働省管轄で訪日就労者を支援する国外就労者情報援護センター(CIATE)の佐倉輝彦専務理事と、日本の年金調査や遺産相談などを手掛ける手続き代行業KAMP(サンパウロ市)の井垣優子さんに事情を聞いた。

急増する相談件数

 「これ、一体なんですか」。六月下旬、日本語でびっしりと記された年金特別便を手に、不安そうな面持ちの年配の日系人が続々と両事務所へ相談に訪れた。元訪日就労者で、日本で保険料を納めていた人たちだ。
 「このまま返事をしなかったら年金が取り消されるのではないか」。日本語をある程度読める人でも文書の意図が理解できずに、危機感を訴える人もいた。それに意図がわかっても正しい記入や返信方法がわからない。
 年金特別便に関連した年金の相談は、同センターに今年だけで四十件以上、井垣さんの事務所でも六月だけで百件以上も寄せられた。
 佐倉さんによれば同便の意味が理解できず、相談もできないまま「書類を捨ててしまった人までいた。簡単なポルトガル語の説明文だけでも添えてあれば混乱は少なかったでしょう」という。
 それに、「返信用封筒の切手は必要ないとありますが、海外から送り返すには必要です。なかには日本語が少しわかる日系人が文面どおりに切手を張らずに日本に送って、書類が紛失したケースもあります」(佐倉さん)とも。

杓子定規な社保庁

 こうした書類上の不親切に加えて、社会保険業務センターが昨年以来、大量に増員した相談窓口コールセンターも、「外国在住者向けの問い合わせに十分に応えられていない」と井垣さんは困惑した表情で言う。
 「オペレーターの多くがまだ経験が浅く、杓子定規な対応しかできない。年金のなりすまし詐欺を恐れてのことでしょうが、日本語を話せない日系人の代わりに電話しても、本人としか話せないと言われる事が多いんです。今の電話相談窓口は日本語が出来ない人には窓口として現実的に全く機能していません」。
 年金は外国籍の人にも受け取る権利があるが、中には「年金受給は日本国籍者だけです」と、根本から間違った情報を自信たっぷりに返答するオペレーターもいる。「ポルトガル語の分かる職員を一人だけでも置くべきです。それに指導も徹底してほしい」。

一時金のからくり

 こうした問題に加えて、井垣さんによれば、国民年金に関した外国人脱退一時金制度の手続きにも不都合が生じている。これは、年金受給資格期間の足りない外国人が、出国後の二年以内に申請すると、加入期間などに応じて保険料の一部を社会保険庁から一時金として受け取れる制度だ。即金で手に入るため、帰国したデカセギの多くが申請する。
 ただ、脱退一時金は請求者が日本に住んでいないことが明らかにも関わらず、二〇%の所得税が差し引かれる。例えば「二十万円払い戻します」と言う決定通知書が来ても、実際に支給されるのは十六万円のみだ。
 後に税務申告すれば所得税分は返還されるが、その仕組みを知らずに、みすみす損しているデカセギも多いという。井垣さんは「それならば政府も最初から百%払えばいい。広報ももっとするべきだと思います」との意見をもっている。
 「日本の年金システムは、世界に類を見ない優れた制度であり、その恩恵に感謝しているデカセギも多い」と二人は言う。しかし、グローバル化が進展し、両国で多くの人員が行き交う現代においては、「年金制度は日本国で生活する日本人のもの」という認識では対応しきれない時代を迎えている。
 ブラジル政府は年金通算協定の締結を二国間交渉のテーブルにもあげている。年金問題はもはや単なる国内問題ではない。海外にも密接に関連する問題として、早急に対処していくことが必要といえそうだ。(ニッケイ新聞・池田泰久)
写真=相談を受けている国外就労者情報援護センターの佐倉輝彦専務理事

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