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1日に新JICAが誕生=どうなる日系社会支援=小林所長、「現状維持、増加も」=JBICと統合

ニッケイ新聞 2008年10月02日付け

 独立行政法人JICA(国際協力機構、緒方貞子理事長)がJBIC(国際協力銀行)の海外経済協力業務、外務省の無償資金協力業務を統合し、一日に「新JICA」が誕生した。同日発表のプレスリリースによれば、新機関ではODA(政府開発援助)を一元的に実施することでより効果的な援助が可能になるとあるが、一方で日系社会支援については触れられていない。ニッケイ新聞の取材に対し、JICAブラジル事務所の小林正博所長は、「日系社会の関連事業が大きく変わることはない」と言明した。
 統合前の旧JICAによるブラジルへの協力は、〇六年には年間約二千四百万ドル。〇七年までの累積金額は約九億七千七百万ドルに上る。
 また、〇七年までにブラジルから八千六百七十六人の技術者が訪日、日本からは二千三百十二人の専門家がブラジルを訪れている。
 「新JICA」は政府のODA政策に基づき、援助手法の枠にとらわれない広い視点から、計画的・戦略的な援助を約百カ国の海外拠点を通じて行っていくことを目標としている。
 今回の統合により、ODAの三つの手法である「技術協力」「有償資金協力」「無償資金協力」を一元的に実施することにより、より効果的な援助ができる機関となる。
 さらに、民間部門が持つノウハウやネットワークと効果的な連携・協調を図り、日本が蓄積してきた経験と技術も生かした支援を展開し、内外の学識者とも連携しながら、途上国の開発課題や援助政策に関する研究を行う「JICA研究所」を新たに設置し、その成果を幅広く発信していくとしている。
 ニッケイ新聞の取材に対し、JICAブラジル事務所の小林所長は「JICAのODAとJBICの円借款が一貫して繋がることによって総合的な事業ができるし、プロジェクトに対して直接的に技術協力を行うことができる」と統合のねらいを説明する。
 その一方、新機関が掲げるビジョンでは、海外の日系社会に関する事業について触れた部分は見受けられない。
 前身の海外協会連合会、海外移住事業団時代から続いてきた移住者・日系社会支援。移住者支援については一世人口の減少とともに漸減傾向にあるが、日系社会支援の一環として実施されている訪日研修事業には、八六年から〇七年まで二千四百人が参加した。その人数は漸増傾向にあり、昨年は百六人が訪日している。
 移住事業終了後の開発青年制度につらなる日系社会青年ボランティア、日系社会シニアボランティアについては、〇五年の八十三人から今年は五十八人とやや減少傾向にある。
 これらの日系社会関連事業は、新JICAの発足とともに縮小されていくのだろうか。
 今回の統合が旧JICAの対日系社会関連事業に影響を及ぼすかとの問いに対し、小林所長は、「日系社会に対しては、基本的に大きく変わることはなく、現状を維持する」と言明。さらに、「昨年、緒方理事長が来伯された時に日本語教師などを増やしてくれることを約束してくれた。JICAとしては現状維持をしていくし、(ボランティアを)増加していくことを目標にしている」と力強く話した。

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