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デカセギ大量失業時代か=金融危機の影響もろに=派遣業者もため息、悲鳴

ニッケイ新聞 2008年10月25日付け

 「多くの派遣会社がつぶれている。今年を乗り切れるかが最大の試練だ」。米国発の世界金融危機を受けて、ブラジル側のデカセギ派遣業界にも不安が広がっている。日本からの輸出が低迷し始めたことで、日本の工場が生産調整に入り、雇用を抑えられ、デカセギの失業が増えていると日本側メディアでも報じられている。失職した多くのデカセギが再就職に悪戦苦闘していることから、ブラジルからの新規派遣がさらに困難になっている。派遣業界も試練の時代に突入したようだ。

新規派遣はストップ

 「デカセギ希望者の待機リストがいっぱい。でも、日本からほとんど派遣要請が来ないからどうしようもない…」。サンパウロ市リベルダーデ区内のあるデカセギ派遣会社。同社の日系人プロモーターは、こうため息をつく。
 「例年でもお盆や正月の頃になれば、求人は一時的に減る。でも今年はずっと調子がおかしかった。七月ごろから特に仕事が減った」と九月の金融危機を前に、デカセギ先行指標が反応していたことを示唆する。
 他のデカセギ斡旋会社に勤める女性も「今回のアメリカの金融危機がとどめを刺した。このままの状態が続けば、経営が立ち行かない会社も増える」と語る。
 この女性によれば、現在、日本の外国輸出向け工場の多くが生産調整に入っており、解雇されるデカセギが増加した。
 職種を問わず、再就職を求めるデカセギで溢れ、最近ではこれまで女性の派遣が中心だった弁当工場に男性まで殺到する姿がみられるようになったという。
 そのため、ブラジル側で派遣を待つ女性たちに、仕事がほとんど回ってこなくなるという現象が起きている。「ここ四カ月間、弁当工場への派遣を見合わしている」と話す。
 デカセギの再就職にあたっても、ネットワークの強い派遣会社とそうでない会社にも差があるという。「派遣前に貸し付けた飛行機代を回収しなくてはいけないし、私たちの会社では仕事をなくした人には他の仕事を何とか紹介している。でも、小さな会社は大変かもしれない」。

帰伯しても現実厳しく

 このほか、再就職できなかったデカセギが帰伯する可能性が予想されるが、ブラジル側の旅行関係者によれば、今のところ、「仕事をなくしたデカセギが多いことは聞いているが、まだそうした人たちの多くが帰国しているかはよく分からない」という。
 デカセギ帰伯者に職業を紹介するボランティア活動をしているグルッポ・ニッケイの島袋レダさんは、「長い間日本に暮らし、学歴や専門的な職業経験のないデカセギがブラジルに戻ってきても、良い仕事を見つけるのは難しい。たとえ就職できても、給料は日本にいたときよりも少なく、長く続けるのは難しいだろう」と指摘している。戻ってきても困難が待ち受けている。

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