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長野県=デカセギの失業が激増=金融危機が生活直撃

ニッケイ新聞 2008年10月28日付け

 【信濃毎日新聞】世界的な景気減速で、長野県内の工場で働く日系ブラジル人の雇用が相次ぎ打ち切られている。ほとんどが派遣契約で突然の失業に戸惑い、職探しに奔走する人がいる一方、あきらめて帰国する人も多い。日系人相手の飲食店や商店の経営も苦境に陥り、一九九〇年代初めから県内の労働現場を下支えしてきた日系人をめぐる状況は「今が一番厳しい」との声も上がっている。
 「仕事がなくなった」。伊那市内のテレビ部品製造工場に一年半ほど派遣されていた日系ブラジル人男性(42)は九月末、派遣会社からそう告げられ、十月から失業した。
 派遣会社が用意したアパートで日系人女性(22)と同居。収入の一部を母国の家族に送金してきたが、十二月までに派遣先が見つからなければアパートを出なければならない。見通しはなく「どうしたらいいか、分からない」。
 安曇野市の日系人男性(32)も、派遣されている大町市内の工場での勤務が今週末で終わる。人員削減で約二百人いた日系人ら派遣社員は六十人ほどに。来年三月まで働く条件だったが、十月に入って打ち切りを告げられた。履歴書を携えて諏訪、上伊那地域で求職活動を始め、「早く探したい。どれでも、どこでもいい」と焦りを隠さない。
 県内では八月の有効求人倍率が三年ぶりに一倍を切り、金融危機を受けて雇用環境はさらに悪化。派遣受け入れを打ち切った伊那市のテレビ部品製造工場側は「今後増産の予定もないため、派遣契約を終了した」と説明する。同工場で働いていた日本人派遣社員らによると、派遣社員は約五百人で、七割ほどが日系人。同市の派遣会社役員男性(56)は「これまでよかった南信の経済情勢も悪化しており、今は派遣したくても仕事がない」と話す。
 こうした状況を受け、同市でブラジル料理店を営む日系人女性(57)は「客の減少は特に今年に入ってから目立つ」と嘆く。ブラジル食材を販売するスーパーの日系人男性(36)も「客は七割がブラジル人。今月に入って売り上げは二割落ちた」と心配する。
 塩尻市のブラジル食品販売店では、店の窓に、帰国を前にした日系人が張る「車売ります」というビラが急増。日系人の男性店長(41)によると、店の売り上げが昨年より三割落ちる一方、店内に入居するテナントが扱うブラジル行きの航空券の売れ行きは好調という。
 店の常連客で、市内の工場で契約社員として働く日系人男性(38)は日本滞在歴約十六年。帰国する仲間も多いといい、「今が一番厳しい」とこぼした。

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