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歌と踊り、太鼓で描く琉球ロマン=大盛況の『美』サンパウロ市公演=文協、県人会満員の人気

ニッケイ新聞 2008年11月26日付け

 沖縄の歌舞劇団「美」(ちゅら、大田礼子代表)のブラジル公演が二十一日、サンパウロ市を皮切りにはじまった。伝統芸能を継承しながら現代的にアレンジした創作舞踊で華やかに琉球王朝の歴史を描く同劇団。初日の文協大講堂には一千人以上、翌二十二日の沖縄県人会館にも八百人以上が訪れる人気を見せた。
 琉球舞踊の名門、玉城流玉扇会の若手女性舞踊家を中心に一九九九年に結成、国内外で公演活動を行なう「美」。百周年を記念した今公演は文化庁の助成を受け、玉城秀子・玉扇会二代目家元、「美」メンバー十六人に加え、五月に来伯公演したエイサー団体「創作芸団レキオス」メンバー、歌手の城間健市さん、スタッフなど三十一人が来伯した。
 二十一日午後六時からの文協公演。開幕前にあいさつした宮城調智実行委員長は、「沖縄で育ち世界に認められた歌舞団」と同劇団を称え、「必ず期待に添える舞台を見せてくれると思う」と激励の言葉を寄せた。
 今回準備された歌舞劇「燃える島・沖縄」は、ブラジル公演のためのオリジナル作品。
 宮廷を舞台にした前半「琉球王国のあけぼの」は、スモークに包まれる中、創作舞踊「宴」で幕開け。宮廷舞踊「四つ竹」が華やぎを添え、続いて登場した王の前で古武道の勇壮な舞、玉城秀子家元による舞などを次々と披露。酔った王と道化との踊りの掛け合いが会場の笑いを誘っていた。
 後半「神々の唄が響く島」では、沖縄に伝わる理想郷「ニライカナイ」の海をイメージさせる青い衣装の踊り手が幻想的に舞い、ロックから民謡まで多彩に歌いこなす城間さんの歌声が会場を圧倒。その後も獅子舞と八岐の大蛇のからみ、レキオスの太鼓、本土から伝わり発達した門付け芸「ちょんだらー(京太郎)」などスピーディーな展開で観客を魅了した。
 最後は出演者全員による歌と踊り、太鼓の共演でフィナーレ。躍動感にあふれた二時間の舞台に惜しみない拍手が送られた。
 演出を担当した照屋忠敏さん(レキオス主宰)は公演後、「華やかでしなやかな『美』の舞台はレキオスの公演とはひと味違った感じで、反応もとてもよかった」と安心した表情。無事初日を終えたことを喜んでいた。
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 翌日午後四時からの沖縄県人会公演は会場を埋め尽くすほどの混雑ぶり。公演冒頭にあいさつした玉城秀子家元は、〇三年の県人移民九十五周年で来伯した時のことを振り返り、「また来てほしいと言ってもらえ、百周年の年に来る事ができた」と喜びを表した。
 前夜とは趣向を変え、この日はブラジルの玉扇会の舞踊家、生徒たちも出演して舞台を盛り上げた。終了後は会館で歓迎会が開かれ、記念品の贈答なども行ない、郷土料理を囲みながら交流を深めた。
 山崎靖明プロデューサーは「歌と踊り、演出で、ドラマがありスピーディーなものを目指した」と話し、「思っていた以上に来場者の乗りが良かった。若い世代にも刺激になったと思う」とサンパウロ市公演を振り返っていた。

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