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分岐点に立つ若者たち=第2部・デカセギ子弟の帰化問題=連載〈4・終〉=ブラジルに後ろめたさ感じる=「日本人の自信つけたい」

ニッケイ新聞 2009年2月10日付け

 藤橋ゆき江さん(24、三世)が日本に帰化したことに対し、家族は「おめでとう」といってくれたが、二歳で来日した三つ年下の妹の反応は少し違った。
 「よかったね、とは言ってくれたんだけど、帰化したらと勧めたら『わたしはブラジル人だからいいよ』とそっけない感じだった」。
 「わたしが姉妹の中でいちばんブラジルを知ってるはずなんだけど、日本人意識が強くて、上の妹は三人の中でいちばんブラジル人意識が強いみたい。下の妹は日本で生まれたのにブラジル料理も好きだし、気が向いたらポルトガル語で挨拶もするし、中間かな」と分析する。
 「うちは日系さんばかりだから大変」。仕事の話を聞く中で、彼女が日系ブラジル人のことを「日系さん」と呼んでいるのが気になった。
 「会社でそう呼んでいるせいもあるけれど、『外国籍』とか『外国人』という呼び方は好きじゃないから。わたしも『日系さん』なんだけど」。
 幼い頃から、周りとほとんど同じ自分が『外』の人として括られることに疑問を感じていたせいだろうか。他人事のようだが、どこか親しみが込められた不思議な響きがある。
 「自分は変わらないんだけど戸籍を持ってしっくりきた感じがする」。
 とくに、二重国籍の意識はないという。
 「まだ運転免許証の表の本籍欄はブラジルのままだから、更新まではあまり見せたくないんだ」。
 しかし『なにじん』か、と尋ねられたら『日本人』と即答するかという問いには、「言い訳しちゃいそう。ブラジルに後ろめたさがあるのかな」と苦笑する。
 彼女が書類の上でも日本人になってから、本当の日本人になるには足りないものがあると気づいたという。
 「付き合っている日本人の恋人といつか結婚することを考えたとき、いろいろなしきたりや、子どもに伝えなくてはいけない風習とか、そういえば知らないなって。そういうのが身に付いたら日本人の自信つくかな」。
 自分の国籍に疑問を持つ、しっくりくる国籍を求め、その国民になるために文化や習慣を身に付ける。
 彼女にとってのアイデンティティは、与えられるものでなくて自分で得るものだった。
  ◎   ◎
 同時期にデカセギの子供として来日した同い年の二人は、それぞれの思いで日本国籍を取得し、日本人になるとはどういうことかを考えた。
 阿弥陀くじのように行ったり来たりしながらも、確実にどこかへたどり着くが、わたしたちは彼らが隙間に落ちないように見守っていかなければならない。
(終わり、秋山郁美通信員)




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