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不況直撃、保見団地の今=山積みされた日本人の厚意=連載《下》=「優しい人、涙が出そう」=危機で見える本当の心

ニッケイ新聞 2009年2月24日付け

 【愛知県発】日本人ボランティアの佐久間由隆さんが届けられた救援物資の整理作業に追われている。同団地に住んでおり、以前からエコパフで木工などのものづくりの授業を担当していたが、今や日本人ボランティアの中心といえる。救援物資の整理を仕切る心強い存在になっている。
 電話も静かなときがない。ほとんどが新聞を見た日本人からの問い合わせのため、ブラジル人スタッフが対応できず、日本人スタッフが出られないときは放置され、鳴りっぱなしになる。
 善意の贈り物には、小さな手紙がよく添えられている。「余りものですみませんが食べ物に困っている人に届けてください」「少しですが役立ててください」「お小遣いから」と千円札が挟まっていたり、商品券が食糧の隙間から出てきたりもする。
 「本当に優しい人がいっぱいいて、涙が出そう」と小百合さん。電話でも励ましの言葉を添えてくれる人がほとんどだが、まれに中傷するために電話をかけてくる人もいる。
 「お前は日本人なのにどうしてくだらない外国人を助けるんだ。食べ物を集めて自分たちでわけるんじゃないか、なんてわざわざ電話してきて、対応してる暇なんてないのに」。悔しそうに受話器を置き、小百合さんはため息をつく。
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 配布を始めてから、求められているものや、整理や配るのに扱いやすいものがわかってきた。贅沢はいえないが、集まった米の半分を占める玄米は、そのままではちょっとブラジル人には難しいようだ。
 またどこかの農家の人が軽トラックで大量の米を運んできてくれた。
 「スイマセーン、アリガトー!」と中へ運ぶのを手伝うブラジル人、整理を指示する日本人、米を二キロずつ袋分けするブラジル人、取材や見学に来る日本人、救援物資を受け取るブラジル人が入れ代り立ち代り入れ替わり立ち代り訪れる。
 学校に残っている生徒たちはそれらを見ている。去っていく仲間を見送り、鳴り止まない電話の中で授業を受け、見学する日本人から次々に写真を撮られ、中心にいながら傍観しているような不思議な存在だ。
 休み時間には、玄米をビンに入れ、棒で押して精米する方法を佐久間さんから聞き、遊び感覚で米を突く。
 「百年に一度」と大騒ぎするマスコミや、それに踊らされる大人たちを見ながら、子供たちはきょとんとした顔をしている。
 欧米先進諸国では、外国人排斥や嫌悪という市民レベルの動きも起きている。不況という機会は、普段見えない人間性が現われる時かもしれない。
 同団地内でも、これまでゴミ問題や違法駐車、治安の不安など日本人住民とのいざこざが多くあったため「町内会や地域の公民館は支援に消極的」(佐久間さん)と言われる。
 しかし近くの病院が米の支援を表明したり、これまで同センターを訪れたこともなかった団地の日本人住人からの差し入れがあったりと、日本人との親交の兆しさえ見せている。危機の今こそ、お互いの関係を見直す好機かもしれない。(秋山郁美通信員)

写真=食料などの物資を配布している様子




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