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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2009年2月27日付け

 乞食から日本語で「二レアルちょうだい」といわれた時は驚いた。先週金曜夜、サンパウロ市トマス・ゴンザガ街の日本食レストランに向かう途中の話だ。こんな形で大量帰伯の一端が現れるとは――と暗澹たる気分になった▼顔をみるとメスチッソだ。流ちょうな日本語で「一月に帰ってきたんだ」「埼玉県の草加せんべいって知ってる?」などと人懐っこく語りかけてくる。二十歳前後の若い彼は、いかにも路上生活者風のブラジル人の若い女の子と子供を連れている。扶養家族のようだ。女の子がいぶかしげにポ語で聞いてくる。「彼は日本語をしゃべっているらしいけど、あんたは理解できるの?」▼日本で生活したから身に付くような今風のしゃべり方をし、一月に帰ってきて、東洋街周辺で乞食生活をする若い日系人は、ある意味、金融危機による大量帰伯の象徴的な存在かもしれない▼帰ってすぐ乞食になるような者が、よく飛行機に乗れたものだ。それか昨年の一月か。もしかしたら日本でも乞食をやっていて、回りの真面目なデカセギが嫌がってチケットを負担して送り返したのかも知れない▼このような人物が今後増えるのかと思うと非常に気が重い。ぜひとも援協福祉部から援助の手を差し伸べて欲しいものだ▼ブラジル社会で築いてきた日系人の地位やイメージを、日本からお金を持って帰ってきているはずのデカセギが壊すとなれば実に皮肉な現象だ▼その話を「ごんべ」店主にすると「みんな、仕事しなきゃだめだよ」と正論を吐く。その通りだ。なんでも二レアルあれば「オベントー」が買えるとか。日本語の達者な乞食が増えないことを切に祈る。(深)

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