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長崎県人会横領問題=前会計理事を提訴へ=使途不明金13万レアル=息子の口座への入金も=会館賃貸も総会で承認

ニッケイ新聞 2009年3月3日付け

 【既報関連】昨年十二月二十四日付けで本紙が第一報を報道した長崎県人会の横領問題が遂に裁判問題へと発展――。長崎県人会(野口圭三会長)は一日、定期総会を開き、横領・背任行為が確実となっている今井千兼子前会計理事に対し、三カ月の話し合いの猶予期間を与えた上で、誠意が見られない場合、民事・刑事の双方で提訴することを決議した。二十三人が出席した。〇六、〇七年度支出金十三万レアル分の領収書の提出や、県人会の調査で明らかになっている着服金約六万レアルの返却を求めていく。総会では、親睦団体である県人会が訴訟を起こすことに不快感を示す会員も見られたが、「止むを得ない」と多数が法的な徹底追及を支持した。なお、現在県人会の口座残金が八千レアルにも満たず、経営状態が逼迫していることから、会館の賃貸も決議された。

 〇八年二月の総会で報告・承認された残金は一万六千レアル。しかし実際には、今井前理事が着服を繰り返した結果、わずか一千六百レアルしかない状態で新体制がスタートしたわけだが…。
 何故、誰も気付かなかったのか――。今井前理事と中野恵市前会長の任期中には、一度も監査会が開かれておらず、領収書や帳簿は今井元理事が自宅で保管しているという。会運営への無関心からか誰からも指摘がなく、何と同総会の改選で同理事が監査に就任(昨年十二月の総会で解任)されている。
 この異常ともいえる状態を二年間に渡り、見過ごした監査役や会員も自己批判すべきだろう。しかし、中野前会長自身がこの前代見聞の不祥事に結果的に〃加担〃したとの見方が会員のなかで強くなっている。
 今井前理事が着服したと見られている金額の半分以上がインターネット上で操作されており、そのクレジットカード取得に際し、中野前会長のサインがあるからだ。
 長崎県人会は、〇五年三月四日に残高照会のみに使用できるカードを取得しているが、〇六年八月十七日に今井前理事と中野前会長の申請により、カードで口座操作ができるカテゴリーへの変更が行われている。
 この件を調査している会役員によれば、二人は、「誰かが勝手にサインした」と知らぬ存ぜぬを決め込んでいるというが、銀行に問い合わせた結果、「この変更には、サインする本人が来行する必要があるようです。否定しても筆跡鑑定すれば分かること」と語気を強める。
 この役員が入手した出入金明細によれば、翌月からはネット上での操作が頻繁に行われ、今井前理事の自宅の電話、電気、ガスなど光熱費のほか、ホテル、保険、飲食代、車の月賦、果ては息子の銀行口座への振込みもあるから驚きだ。
 「〇六年九月二十五日から〇八年七月八日までの記録で、最低でも約三万五千レアルが個人的な支出に使われている」と同役員は指摘、加えて、銀行で五百レアルの引き出しが五十回(二万五千レアル)行われていることも発表した。
 さらに不可解なのは、カードは計三枚存在しており、名義が今井前理事や息子のものとなっていることだ。会の資金をまさに私物化していたことが明らかとなっている。
 なお、会計事務所への支払いに際し、発行される銀行支払い請求書(boleto)を領収書に見せかけた文書偽造の疑いがあるほか、同事務所の会計士に「県人会の会計処理を自分の言う通りにしてくれるなら、五百レアル支払う」と持ち掛けていたことも確認されている。
 総会では、これらの状況説明が行われ、ため息と驚きの声が次々に上がった。
 野口会長によれば、以前に較べ、今井前理事は話し合いの姿勢を見せているというが、「領収書は会の事務局に置いた」「私個人のお金を会に入れたものもある」と返却はおろか、横領そのものを否定、謝罪の態度も見せていないことから、「話し合いで何とかならないか」という穏健派の意見を抑え、三カ月の交渉期間を経て、提訴に踏み切ることで意見が一致している。

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