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浜松=ブラジル人の6割が失業か=「がんばれ!ブラジル人会」調査=在住ブラジル人2千7百人が回答=就職に求められる日語能力

ニッケイ新聞 2009年3月18日付け

 静岡県浜松市に住むブラジル人の約六割が、現在失業しているか、または解雇を予告されていることが分かった。同市のブラジル人団体・企業などでつくる「がんばれ!ブラジル人会」が一月後半から二月にかけて、市役所の協力のもと行なったアンケート調査により判明したもの。サンプル調査のため正確な数字とは異なる可能性があるものの、在日ブラジル人が直面する状況の一端を浮き彫りにする結果だ。

 浜松市に住むブラジル人は、全国自治体中最多の約二万人。同調査「浜松市・経済状況の悪化におけるブラジル人実態調査」は市内の区役所や国際交流協会、ブラジル銀行支店、ハローワーク、ブラジル商店などで実施され、同市在住のブラジル人二千七百七十三人が回答した。(ほか、市外在住者二百三十六人が回答)
 調査の結果は十三日に日本で発表。十四日にサンパウロ市で開かれたCIATE(国外就労者情報援護センター)主催の在日ブラジル人シンポジウムで、比嘉エバリスト神父が説明した。
 調査用紙は日ポ両語で、滞日期間、家族構成や住居、雇用、日本語レベルなど二十二項目について質問している。
 回答者は二十代から三十代中ごろまでの層が中心。家族構成は「配偶者と子供一人」「配偶者のみ」で約四割。約三一%が派遣会社提供の住宅に住む。
 調査結果で最も目を引くのが、雇用状況に関する回答だ。
 「現在失業している」と答えた人は四七・三五%、「解雇を予告されている」と答えた人は一三・八五%で、合計すると約六割に上る。失業している期間についても「四週間以上」が二一%、「八週間以上」が一四%と高い。調査から時間が経っていることを考えると、失業者はさらに増加していると予想される。
 また働いている人の場合も、派遣会社による雇用が四四%を占める。派遣会社提供の住居に住む人が三割いることから、解雇と同時に住居を失う人が多いことがうかがえる。
 回答者の大半は三年から十年の滞日期間で、約四割が永住ビザをもつ。ブラジルに帰国する予定が「ある」と答えた人は約一四%に過ぎず、五八%、一六一四人が「分からない」と答えている。
 「帰国したいけどできない」と答えた人は約四割で、理由としては「お金がない」が七割近いが、ブラジルで仕事がないこと、子供の学校、借金返済などを挙げる人もいた。
 一方、日本語レベルの質問になると、会話が「最低限できる」のは五二%。「まったくできない」と答えた人は約二〇%。読み書きでは「まったくできない」が三七%、「カタカナとひらがなはできる」という人が五三%と大半を占めた。それでも六割が車をもっている。
 この結果は、より高度な日本語を学ばなくとも暮らしてこられたブラジル人集住地の現実を示している。しかし、経済危機の深刻化を受け、「毎日行う日本語教室があったら参加するか」との問いに七八%が「する」と答えるなど、意識の変化も出てきているようだ。
 同調査ではさらに、雇用と日本語の関係など、質問項目を横断した分析も試みている。
 日本語能力と雇用の関係を見ると、会話が「まったくできない」「最低限できる」と答えた人、読み書きが「まったくできない」「カタカナとひらがなはできる」と答えた人の場合、失業中または解雇予告を受けている数が「就労中」の倍以上となっており、就職に日本語能力を求められる現状を裏付けた。
 また、持ち家の人の場合、回答者の約半数が就労中なのに対し、派遣会社の住宅や団地、賃貸で暮らしている人は失業中の割合が高くなっている。
 帰国の意思の有無についても、持ち家の人は「予定なし」が大半で、その他の場合多くが「分からない」と回答。持ち家の人もしくは、日本語レベルの高い人ほど解雇されておらず、定住に向けた準備を取っていた人ほど危機の中でも持ちこたえている様子がうかがえる興味深い傾向を示しているようだ。

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