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日系人のボランティア意識は=東京工大の藤田潔さん=米、加、パ国、ブラジルで調査え

ニッケイ新聞 2009年3月20日付け

 アドベンチスタ教会の牧師で、現在東京工業大学博士課程で研究する藤田潔さん(73、福岡県)が自身の研究の調査のため十七日に来伯した。国際援助事業にも携わってきた藤田さんの研究テーマは、日本人と海外の日系人の「寄付」に対する意識の違い。これまでハワイ、トロント(カナダ)、パラグアイで行なってきたアンケート調査を、世界最大の日系社会があるブラジルでも行ないたいと協力を呼びかけている。
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 藤田さんはセブンスデー・アドベンチスタ(SDA)教会の牧師として長年活動する傍ら、国際援助のNGO団体「ADRA(国際援助機構)」の初代日本支部長として、募金活動など世界各地での援助活動に参加してきた。
 現役を引退後、七十歳を過ぎて東工大大学院に入学。社会理工学研究科社会工学専攻で日本人の国際貢献と募金活動について研究しており、その一環として海外の日系人への調査を行なっている。
 パラグアイでの調査は、同じSDA教会の牧師でパラグアイ三育学院創設者の栄田祐司名誉牧師(イグアス移住地在住)がいたことから実現。栄田さんの薦めもあってブラジルでも調査を行なうことになった。
 ブラジルでは、日系団体、日本語学校や教会関係者を通じてアンケートを依頼し、その後は日本国内での調査に入る予定。夫人の孝子さん、栄田さんとブラジルのアドベンチスタ教会の森規和郎、今雪元氏牧師とともに本紙を訪れ、調査への協力を呼びかけた。
 日本人の寄付に対する意識について藤田さんは、歳末助け合い運動などがあるとしながらも、「企業は関心があるが、個人の認識は低いと思う」と話す。これまでの調査を振り返り、「日本人より海外の日系人の方が募金や寄付についての意識は進んでいると感じる」と印象を語った。
 「例えばハワイの日系人の場合、貧しく、苦労した初代の頃は募金や寄付といった観念は無かったが、四世、五世の世代である今の人は意識が高い」とし、その背景として、西洋文化の影響や、自然に援助の意識を植え付ける教育システムが作られていることを挙げる。また、教会や寺院などの存在にも触れ、道徳面、倫理面での教育の必要性も強調した。
 日本にも多くの援助団体があるが、「七割は資金集めに苦労し、つぶれるところも多い」という。自身も募金活動で苦労した経験を振り返り、「後輩が活動しやすい社会づくりを手伝えたら」と話す藤田さん。「例えば日本の国民が十円ずつ出すだけで十億円が集まる。そうした気運が社会全体にでき、ボランティア活動が増えてほしい。自分の研究でこうした方面にクサビを打ち込むことができたら」と期待を表わした。

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