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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2009年4月15日付け

 治安は、実に切実かつデリケートな問題だ。ブラジルはキレイごとで済む国ではないと常々思っているが、治安に関しては特にその思いが強い▼柔道の名人が無残に惨殺されたり、剣道の名手が襲われて怪我をさせられたり、下手すれば新聞に書けないことも往々にして起きる▼なにがデリケートかといえば、例えば拳銃の所持だ。自衛のために拳銃を携帯しようと思っても、ここ十年来の携帯許可が困難になっている。入手するのは難しくなくとも、合法的に使うのは難しい状況がある▼さらに、実際に犯人を目の前にして撃てるかといえば、慣れない一般人には即座に決断できない。おどおどしているうちに、犯人に取り上げられるというケースが日系人の場合は多いという。そうなると、むしろ危険だ▼また、いつぞやも、ある植民地でこんな話を聞いた。地元で敬愛されていた日本移民が惨殺され、ほぼ犯人が分かっているという特殊な状況になった時、みなで金を出し合って地元警察の幹部にお願いし、「エリミナ」してもらったことがあるという。しばらくして約束通り〃犯人〃はどこかへ消えたという。金額を問うと「安くない、大金です」と答えた▼もちろん、日系人自らが手を下している訳ではない。あまりに理不尽な犯人の仕打ちに、止むにやまれぬ判断であったろうと推測するが、それでもあまり公にできる話ではない。日本ならハードボイルド小説と言われる話が現実に起きる▼都市、農村を問わず全伯の日系人、日系団体が共通して悩む問題であり、ブラジル社会への貢献という意味でも、日系人が総力を挙げて取り組んでいい課題だと痛感する。(深)

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