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【文協選挙解説】特徴現われたシャッパ=両派の傾向を分析

ニッケイ新聞 2009年4月17日付け

 「こんな日が来るとはね」―。シャッパ提出日の前日夜、連立を決めた小川彰夫氏と谷広海氏は、顔を見合わせ、笑った。
 二〇〇七年の選挙でも両者連立の動きがあったが、結局三つ巴となり、体制側が漁夫の利を得る形で三期目当選を決めている。
 今回。三度目の正直ではないが、かつてないほどの「チェンジ=変革」への期待感が集まり、野党連合ともいうべき勢力に成長したといっていい。
 注目すべきは、三つの勢力が集結している点だ。
 ここ数年、小川氏が地道に聖南西を中心したサンパウロ市近郊を歩き回り、地道に選挙運動したことで掘り起こされた地方団体。
 サンパウロ市においては一定の力を持つ谷氏や小山昭朗氏ら戦後移住者を中心としたグループ。
 そして、最後にブラジルに名を轟かせる「日本人街」リベルダーデを代表して池崎商会が入った意味は大きい。
 レオポルジーナに文化センターを建設し、リベルダーデを出ようとした渡部和夫氏(現評議員会長)の構想を支持する現体制に真っ向から反対するコンセプトを持ったシャッパといえる。
 従来、理事会のシャッパはサンパウロ市在住の個人がほぼ一〇〇%だった。野党連合にはヴァルゼン・グランデ文協や聖南西連合などの団体が入っている点でも、質的な変化が生じている。
 「団体だと意志決定が遅い」との弊害を指摘する声もあるが、コロニアが希求してきたUNENのような日系連合会化する過程だとも考えることもできよう。
 興味深いことには、二世の小川氏を大黒柱にしながら、戦後移民がそれを支えるという構図も、百一年目に相応しいものだ。
 県連、援協もそうだが、二世が中心になりながらも、一世にはしっかりと活躍の場がある、という図式が過渡期政権としてバランスのとれた特徴あるシャッパを作ったと評価したい。
 一方、体制派はどうか。
 旧態依然とした代わり映えのしないシャッパとの印象は拭えない。
 現理事が十人中九人を占め、全員が個人の二世。
 体制側は直前まで一世副会長を入れようと奔走したものの、小山氏、小森廣氏に蹴られ、林マドカ氏(裏千家ブラジルセンター)に落ち着いた経緯がある。
 五人の現副会長がシャッパに入っていることから、過去二年を振り返っても、大きな変革はどうやら期待できそうにない。
 会長候補の木多喜八郎氏は本紙の取材に「私は〃兵隊〃ですから」と答え、会長とは名ばかりで〃大将〃が実権を握っている状況も現在と変わらないだろう。
 評議員に目を転じてみれば、「チェンジ」側は下本八郎氏を会長に、聖南西、老ク連など団体が副会長になっているのに対し、体制側は、現副評議員会長で前回会長だった大原毅氏。岩崎会長時代の副会長だった西銘光男氏、現副会長の田中エミリア氏の陣容を見ても、人材不足の感が見え隠れする。
 シャッパ自体の魅力はどうやら、「チェンジ」側に軍配が上がりそうだが、それでも現状の票読みでは、体制側が有利な状況に変わりはない。
 しかし、体制側も多少のあせりがあるのか、切り崩しも含めた票固めに奔走する予定となっている。
 評議員選挙前に公表された各派推薦者リストによれば、単独推薦を受けた評議員は体制派が十八、小川・谷派が九。
 体制派は最多の三十三評議員を送り込んだが、十八評議員は小川・谷派からも支持をうけるレロレロ派。
 二十五日にある選挙までの一週間、どれだけの浮動票を取り込むかが勝負の鍵を握る。 (深・剛)

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