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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2009年4月21日付け

 ダルフールを知っている日本人は極めて少ないと思う。アフリカ最大の領土を誇るスーダンの西方にある地域でジェノサイドや多数の難民もいる。日本の7倍もの広い国には3600万人が暮らしているが、この国は1956年に独立以来、内紛が起きており、国際刑事裁判所はオマル・バジル大統領に逮捕状を発行しているが、ダルフールの虐殺は続く▼ここでは1972年から1983年までに200万人が死亡、400万人が家を追われ、難民は60万人にも達した。こうした惨劇は現在も行われており、旧ユーゴで起きた民族浄化も激しくなっている。約200万人の地元民女性が兵士らによって組織的に強姦され妊娠という悲惨が毎日繰り広げられ被害は広がる一方である▼紛争の発端はアラブ系民族と古くからの住民との対立抗争なのだが、アラブ系の組織「ジャンジャウィード」が強く、バジル政権も支持を強化しているのが現状であって国際的な批判の的になっている。この人道的な危機を複雑にしているのは、中国の存在であり、スーダン政府に戦車や武器を輸出して支援を増強している▼中国はスーダン産の石油を輸入し、これを基盤にして両国の絆は強固であり、全長1400キロのパイプラインを敷設するなど友好な関係を築いている。アフリカ、アラブ諸国がスーダン政府を支援しているのも問題だし、この難問を解決するのは容易ではない。だが、この大量虐殺や弱者への強姦を傍観者として見逃すわけにはいかないし、何らかの手段を急いで見出す必要がある。 (遯)

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