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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2009年7月4日付け

 なにかと話題を振りまく麻生太郎首相だが、今回は一大ホームランである。故・菊田一夫の「放浪記」を演じ続ける森光子さんに国民栄誉賞を贈ることにし、官邸で表彰状や記念品を手渡し、森さんも大喜びであった。本当におめでとう。TVのドラマもだが、舞台女優としての彼女の演技は凄いに尽きる▼「むっつり右門」や「鞍馬天狗」の故・嵐寛寿郎を伯父にし小学校6年生のときにマキノ正博監督の「春霞八百八丁」に初出演し、嵐プロの映画でも活躍する。戦時中は故・東海林太郎らと兵士らを慰めるため満州などの前線慰問団に参加してもいる。戦後も女優として生きるが、あの芸が見事なばかりに花開いたのは、菊田一夫に見出されてからだとされる▼1961年に初演された「放浪記」は去る9月までに2017回も演じられ森光子さんは一回も休むことなく主役を務める。傘寿を超えても「どんでん返し」(今は中止)を演じ観客の拍手を受けながら舞台女優としての芸と美を見せてきた。勿論、この単独主演は新記録であり、それへのご褒美が光り輝く国民栄誉賞である▼女優というよりは、役者がふさわしい森光子さんは、只今―89歳。かなりの高齢ながら、何処にも老醜はない。若々しく、授与式でも「再来年は(1961年の)初演から50年に当たる。それまでやりたいという決心が固まりかけている」と舞台への意欲に満ちているのが嬉しい。女優として文化勲章と国民栄誉賞に輝く森光子さん。心からおめでとうございます。(遯)

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