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日本語版百年史=『農業編』目次を公表=「日本移民の貢献明らかに」

ニッケイ新聞 2009年7月7日付け

 ブラジル日本移民百周年記念協会の主催事業の一つ、日本語版百年史編纂委員会(森幸一編纂委員長)が三日午後、同協会事務所で記者会見を開き、本編第一巻『農業編』の内容に関する発表をした。年末までに刊行し、日本語で五百頁となる予定。
 森編纂委員長は「日本移民の九〇%は農業移民として入った。農業分野の経験は移民史において重要な位置を占めているのみならず、農業技術の普及や食生活への影響など、ブラジルへの貢献も大きい」と第一巻の重要性を強調した。
 コーディネーターを務める田中規子さんは「日系農業がブラジル農業に質的、量的にどんな貢献をしてきたのかを明らかにするのがテーマです」と編集方針を説明する。
 農業編の名称は『ブラジル近代農業史における日系農業』。第一章は「日本移民送出と受け入れ」として、日本の近代移民政策と農村・農業政策におけるブラジル移民の位置と意味、ブラジル近代国家形成と日本移民の関係などが論じられる。
 第二章は「ブラジル農業の変遷における日系農業」で、主要な生産物の推移、生産地域・主産地の移動、日本人の地域移動、日本人の定着、産業組合の事業の変遷などを、時代区分ごとに書き込んでいく。
 コチアや南伯などの中央会の盛衰史はもちろん、その後、現在の五十八日系農協に至った経緯と変化の様子を分析し、田中さんは「今も地域の農業をリードしていることを書いていきたい」という。
 第三章は「大規模プロジェクト及び地域開発における日系農業の貢献」で、セラード開発、サンジョアキンのリンゴ団地、バイーア州のブドウ生産などを例に、大規模な農業開発の歴史をたどる。さらにアマゾン、東北部、中西部などへの進出も描いていく。
 第四章は「ブラジルにおける農業関連産業と日系農業」で、肥料、農薬、農業機械からセアザなどの市場流通、日本食関連の食品産業、今後の農村活動について展望する。
 第五章は「主要作物の発展過程と農業技術(品種改良等)への貢献」、第六章は「ブラジル農学への日本人・日系人の貢献」となっている。
 同コーディネーターによれば、全部で十三人程度の執筆者に依頼中で、すでに九割ぐらいが決まっているという。すでに執筆者を集めた会議を二回開催し、記述に重複がないよう調整している。
 同編纂委員会では来年中にも第二巻『産業史・社会・政策』、第三巻『生活と文化』を刊行予定で、同時並行して準備作業を進めている。

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