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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2009年7月16日付け

 今年入植八十周年を迎えることもあり、アマゾンの話題が小欄の周りでよく出る。しかし「まだ行ったことないんだよねえ…」という声が多いことに気付く。距離でいえば日本と東南アジアほどあり、文化も違う。乱暴にいえば〃違う国〃だ。時間と経済的余裕と興味がなければ、縁はなかっただろう。伝統的に邦字紙もそうだったようだ▼冗談か本当か知らないが、営業担当者が往路だけの切符を渡され、先払いで貰った広告代で復路切符を買い帰ってきたという武勇伝に近い話も。アマゾンを釣行した作家開高健も著書「オーパ!」のなかで、邦字三紙の取材を受けたが、記者の誰もアマゾンに行ったことがないことに驚いた、と触れている▼先輩記者に聞けば、「アマゾン移民の話が邦字紙の記事となることは少なかった」という。現在アマゾンにいる人より、サンパウロなどに出てきた〃入植経験者〃の方が数としては多いはずだが、声を大にするわけでも集まりがあるわけでもない。入植の条件や環境が違うことから、南伯移民にとって心情的に遠いのだろうか。ただ、今年九月の「県連ふるさと巡り」に異例の二百人が参加することから、関心が高いことは確かだ▼本紙は、第一陣トメアスー移民の山田元氏の講演会(二十日午後六時半~、文協貴賓室)を企画した。マラリアが猛威をふるった開拓時代、ピメンタ―景気と凋落、デカセギも経験、その人生はトメアスー八十年の浮沈そのものだ。同地で健在の一陣移民は三人だったが今月七日、そのうちの一人が亡くなった。アマゾン移住の理解を深め、貴重な証言を聞く機会になればと思う。  (剛)

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