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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2009年8月4日付け

 「諸君」の「紳士と淑女」は面白い。30年ほど愛読してきたが、あの辛辣で抱腹絶倒のコラムの執筆者は誰だろう?と思ったりもする。雑誌記者は博覧強記で取り分け雑学には強い。従ってー文芸春秋の編集者に違いないと独り決めもしたし、毎月届く「諸君」を手にし最初に読むのが、この辛口批評である▼産経新聞の「産経抄」を34年も書き続けた名コラムニスト・石井英夫氏が勇退した直後に「諸君」でこの謎の書き手と対談し、お互いに「上手いねぇ」と褒め合っている。けれども、このときにも苗字も名前も語っていない。だが、最終号となる6月号で「読者へ」「紳士と淑女」子ーの小文の末尾に筆者は徳岡孝夫とある▼毎日新聞の出身で保守派論客として著名であり痛烈な論評は何回も目にしたし、あの厳しくもユーモアに満ちた文章は、やはりーこうした人でないと書けないの印象を強くする。休刊のため最後になる号には、30年に亙る「紳士と淑女」から選んだ名品を掲載しているが、どれも山葵が利き笑いもありとても愉快で傑作なのである▼読売新聞会長・主筆の渡邊恒雄氏も大のフアンで「紳士と淑女」の快感が味わえなくなるーの文を寄稿し、毎号「諸君」を手にして、とびつくように読んでいた、と記している。こんなにたくさんの読者を惹きつけてきた徳岡孝夫氏も、血液性ガンで入退院を繰り返しているようながら一日も早い回復を祈るのみである。匿名コラムニストは読者との別れを大木惇の「言うなかれ、君よ、わかれを」と、あの大東亜戦争のときに国民に親しまれた「戦友別盃の歌」で結んでいる。   (遯)

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