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30周年迎えた東京農大会=記念シンポに3教授来伯=食料、エネルギーなどテーマに=250人参加、関心高く

ニッケイ新聞 2009年8月5日付け

 ブラジル東京農大会(大島正敬会長)創立三十周年を記念した学術シンポジウムが一日、サンパウロ市の三重県人会館で開催された。日本の東京農業大学から来伯した三教授をはじめ、計六人が講演。当日は用意した二百五十席が全て埋まり、立ち見が出る程の盛況ぶりだった。

 ブラジルでも抜群の結束力を誇る農大会。講演には北はパラー、南はサンタカタリーナまで、さらに亜国から駆けつけた二人の校友など、約四十人が集まった。農大留学生OBも三人参加し、準備に通訳にと、年を隔てた先輩と後輩が共に母校からの訪問団を出迎え、共に祝った。
 シンポジウムの統一テーマは、「食料とエネルギーをめぐる最新技術とブラジル農業への期待」。
 日本からは同大学総合研究所の三輪睿太郎嘱託教授、同大学応用生物科学部の鈴木昌治教授、同大学国際食料情報学部の豊原秀和教授の三氏、ブラジル側からは東京農大の姉妹校であるピラシカーバ市ルイス・ケイロス農業大学の城田リカルド教授、農大会の大島会長が講師を務めた。
 在聖総領事館の佐々木真一郎副領事、ブラジル力行会の永田久会長、南米産業開発青年隊協会の盆子原国彦会長、カンピーナス州立大学のヨン・K・パク教授、有機農法の権威として知られている宮坂四郎博士、州観光局森林院元総裁の山添源二ABJICA副会長、JATAK農業技術普及交流センターの広瀬哲洋所長、文協、援協、県連など日系団体関係者も訪れ、講演に耳を傾けていた。
 司会は沖眞一副会長が務め、鈴木日出男副会長が開会の挨拶。最初に大島会長が「ブラジル東京農大生の移住小史」について講演した。
 農大生のブラジル移住が始まった一九二八年からの歴史を説明し、戦後五七年に移住、農大移民の草分け的存在になった「軍艦組」と言われる七人のOBの話にも触れ、その後の農大生の活躍ぶりなどを説明した。
 続いて「遺伝子組換え作物の開発と普及―現状と方向」をテーマに講演した三輪教授は、遺伝子組換えにより除草剤と害虫へ抵抗性をもつ作物が農業者の支持を得て、収量が増加し、さらに生産コストが下がったことを報告。中でも、ブラジルは遺伝子組換え大豆の収量割合が全体の八%を越え、今後の普及を左右しているという。
 鈴木教授は「バイオマスエネルギー変換技術の新展開」について講演を行った。ブラジルのバイオエタノールの普及状態を説明するとともに、紙や糞、汚泥や食品などのバイオマスからエタノールへ変換する際に、問題となっていた残留物や水処理の問題を解決した「農大方式」と言われる新方式での発酵器を紹介した。
 昼食を挟み、城田教授が「ブラジルにおけるバイオ燃料のポテンシャル」について講演。自動車の燃料となっているアルコールについて述べ、ブラジルにおける原料のサトウキビの作付け面積や収量、生産技術の向上などについて説明した。
 最後に「日本の農学の現状と東京農業大学」と題して講演した豊原教授は、農大の生みの親、榎本武揚氏、育ての親、横井時敬氏についてや、農大の精神の根幹をなす、実学主義について説明した。
 現在の全学生数は約一万二千余人、そのうち女子は約四割で、農大の力は百十八年の伝統、五学部十七学科の総合力、国内外十三万人の校友、健全経営などと説明した。講演の中で、農大の構内の写真が写されると、昔との違いに会場から感嘆の声があがっていた。
 その後、質疑応答が行われ、最後の総合討論でも、特に農業従事者からは具体的なアドバイスを求める意見など、活発な質問が飛び交った。
 講演会に参加した下條昭弘さん(62卒・拓殖学科)は、「農大は〃拓殖精神〃という、間違いの無い教えをしてくれた」と述べ、「先生方はみんな後輩。農大生のイメージとはだいぶ違うが、興味のある話だった」と感想を語った。
 講演会を終え、「ほっとしました」と話す大島会長。「初めてのことだったので、どれだけの人が来るか予想もつかなかったが、興味を持って来てくれて良かった」と感想を語った。
 講演終了後、松田藤四郎理事長の挨拶を鈴木教授が代読。その中で、来年の汎アメリカン校友会にはぜひ参加したいとの意向が伝えられた。

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