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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2009年8月12日付け

 二〇〇〇年の発刊から十年目となる来年三月、勝ち負け問題を描いた『コラソンエス・スージョス』(フェルナンド・モラエス著)の映画撮影が始まるようだ。監督はヴィセンチ・アモリン(43)。セルソ・アモリン外相の息子で八七年から映画製作に関わり、監督作品もある▼ブラジルでも好評を得たクリント・イーストウッド監督の『硫黄島からの手紙』(〇七年公開)の製作スタッフが参加するという。同映画はアメリカ人の監督にも関わらず、日本人俳優によるほぼ全編日本語で作られた。従来のアメリカ映画の〃変な日本語〃がなく、日本での評価も高かったことから、俳優も日本で募集するとか▼史実に関しては、文藝春秋の元編集長で『昭和史』の著作もある半藤一利氏が「よく調べている」と唸ったというから、スタッフの実力は太鼓判―といってもいいのだろう。だが『コラソンエス~』の方は誰が太鼓判を押すか。報道では、「テロリスト集団臣道聯盟」と書かれている▼実行犯の証言などから、十万人の会員を擁したという臣聯が組織的に関わったことには疑問符がついている。臣聯を実行グループと断じた『コラソンエス~』を基にする脚本であれば、当時三十万人コロニアの三分の一がテロ派ということにもなり兼ねない▼勝ち負け問題を扱った映画としては、五〇年代製作の『南米の荒野に叫ぶ』以来。各方面からの圧力もあり、公開はならず幻となっていた。百周年後の今、〃ブラジルの歴史〃と捉える機が熟したと見るべきなのだろう。だからこそ当事者であり、成員のコロニアが歴史検証の声を上げるべきではないだろうか。  (剛)

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