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新たな文芸活動にチャンスを=文協=にっけい文芸賞授賞式=家族や仲間150人が祝す=来年からマンガ部門も

ニッケイ新聞 2009年11月27日付け

 【既報関連】ブラジル日本文化福祉協会(木多喜八郎会長)の「第39回にっけい文芸賞」(にっけい文芸委員会、浜照夫委員長)授賞式が20日夜、文協ビル貴賓室で行われた。日本語部門、ポルトガル語部門の入賞者・代表者6氏が晴れ舞台で栄えある文芸賞を受け取り、駆けつけた家族や仲間150人から温かい拍手が送られた。最高齢受賞者の安良田済さん(山口)は、「94歳になるまで賞をもらったことがない。人生の最良の日」と喜びを噛みしめていた。
 式典には各日系団体の代表者をはじめ、関口健治在聖総領事館領事、内山直明国際交流基金サンパウロ文化センター所長、千坂平通JICA聖支所長、宮坂国人財団の上原啓三専務理事、トッパン・プレス出版印刷の奥山啓次代表取締役らが出席した。
 小野寺郁子選考委員が日本語部門の講評。安良田さんの「日系コロニア文芸(下巻)」は、「94歳ながらの力作。これまで文芸に携わってきた人の足跡がもれなく収束され『先達への鎮魂』となる作品」と、その価値を称えた。
 また、韻文賞に輝いた134人の合同歌集「祖国はるかに」を「歌で綴った精神史」と位置付け。特別賞の熊本県人会創立50周年記念誌「もっこす100年の歩み」は、「新鮮な内容が魅力的」と評した。
 10年以上ぶりに再開されたポルトガル語部門について、藤山洋児選考委員は「100周年の盛り上がりは、ポルトガル語での日系文学にも大きく貢献した」とし、2006年から08年に出版されたものの中から選ばれた3作品を紹介。「日本語の作品に匹敵する素晴らしい日系文学」と評した。
 賞状と副賞、記念プラッカが贈られ、代表で謝辞を述べた安良田さんは、「じっくり喜びを噛みしめている」と穏やかに語り、「命ある限りコロニアの歴史を残していけたらと思っている。あと2、3冊書くつもり」と洩らすと、会場に声援と拍手が沸き起こった。
 ポ語部門に入賞したジャーナリストのジョルジ・オクバロさん(二世、63)は、著書「O Sudito: Banzai! Massateru!」で、沖縄県人の父マサテルさんの移民の人生を描いた。
 「今まで日系社会との関係はゼロだったが、100周年がきっかけで日系社会と触れ合う機会が増え、またこの本を書く作業を通して、自分の原点に戻ってきたよう」と感慨深そうに語り、受賞の喜びを表した。
 式の中で、永田翼選考委員によって、来年からマンガ部門が設置されることが報告され、浜委員長は、「新しい文芸活動が文協から生まれるよう、ぜひチャンスを作り続けていこうではありませんか」と閉会の言葉で締めくくった。
 与儀昭雄県連会長の威勢の良い発声で一同乾杯、受賞者を囲んでカクテルパーティーが開かれた。

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