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コラム オーリャ!

ニッケイ新聞 2009年12月11日付け

 豪雨が続いたサンパウロの空を眺めながら、映画評論家、故淀川長治氏の名調子を思い出した。
 黒澤明監督の名作『羅生門』の冒頭シーンの雨の凄まじさを「あの雨、強いね、すごいね、日本の雨、アジアの雨ですよ」と語っていた。
 雨の降り様で地域性を感じる、感じさせる両者の感性に感心するが、空を仰いで土を耕してきた長い歴史が、雨に関する多くの語彙を生んだ。
 例えばー、小雨、細雨、糸雨、糠雨、小糠雨、霧雨。煙雨、大雨、驟雨、急雨、沛雨、村雨、快雨、朝雨、暮雨、夜雨、俄雨、狐雨風雨、春雨、五月雨、暖雨、祈雨、慈雨、などなど。
 好きな表現に「馬の背を分けるような」がある。あの固いたてがみを押し下げる強い雨。日本の農村の風景が浮かぶ。 移民はブラジルの雨をどう歌に詠み込んできたろうか。ふと、そんなことが気になった。(剛)

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