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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2010年1月6日付け

 年末、知人宅のXマス会に行ったら、日本政府の帰国支援金30万円をもらって帰ってきたばかりの五十代の元デカセギ女性に出会い、「せっかく日本政府がくれると言ってるんだから、もらわなきゃソン」との言葉に愕然とした。「日本から生活費を送ってもらうように旦那一人を残して、みんな支援金で帰ってきている」▼彼女は日系人とはいえ、訪日前からどこの日系団体とも関わりを持っていない。いわばコロニアから外れた人物だ。もちろん全員がそうではないが、デカセギの中にはかなりの割合で、学校教育とは縁のない育ち方をしてきたポボン(庶民)層がいる。顔は日系だが、その考え方は良くも悪くもブラジル庶民層そのものだ▼その日系家族とも群馬県大泉町で知り合った。一世の両親はとうに亡くなり、二世である本人も日本語は弱く、メスチッソの息子に至っては10年以上も訪日就労したが日本語は片言、昨年末に解雇されて就労先工場が飛行機代を負担して帰伯した。こちらで仕事を探したが見つからず、月500レアル程度の仕事で我慢している。日本の景気が回復すれば飛んでいくに違いない▼先日、『日本移民四十年史』(1949年、香山六郎編)を紐解いていて、60年前の時点ですでに、カボクロ化した日系人の姿を嘆く記述があちこちあるのを見つけ膝を打った▼当然、コロニアから外れて成功している日系人も多い。だが、カボクロ化した層の末裔も大量にいるのではと思い当たった。全日系150万人のうち、実は100万以上がこの層かも・・・。その意味で、日本で展開されているのはコロニアの裏面史なのかもしれない。(深)

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