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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2010年1月15日付け

 高山直巳さんの「日伯論談」(9日掲載)は手厳しい内容であるがゆえに、むしろ本当に日伯経済交流を心配しているという愛情がにじみ出している。中でも「日本の進出企業が伸び悩み、コロニア企業が崩壊した惨状を目の当たりにしていると、その原因は、単に経済や財務上の問題ではなく、日本の歴史的文化的要因にも深く関係しているようにも思える」との一文には考えさせられた▼進出企業と移民、法人と個人の違いはあっても「移住」という意味では共通点は多いだろう。欧米人にとって南米は同じ西洋文化圏の一部であり、通底した文化基盤をもっている。例えばキリスト教文化圏というだけで、言葉は異なっても考え方の共通点は多い。その点、日本は文化も言葉もまったく基盤から異なっており、文化差は激しい。その中で、企業風土(家庭習慣)をどう守り、どんな後継者(子供)を育てていくのかは共通した悩みといえる▼日本在住者にはわかり辛くても、移住体験者同士なら理解しあえる点もある。例えば、日本で「国際化」と言った場合、一般的には家庭の外にいる外国人と一定の距離を保ちながらどう仲良くしていくかという「ご近所付合い」の問題だが、移住社会においては、外国人の始まりは自分の子供(社員)に他ならない。家庭(企業)の中に外国人を抱え、一定の秩序と常識を作り上るノウハウが今培われている最中だ▼高山さんの日伯論談を読んで、法人と個人の分け隔てなく、今こそ「移住」の現代的な意義、外国にきて初めて分かる日本人や日本文化の特質を、百年間の歴史から読み直すことが重要だと痛感した。(深)

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