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高知新聞=連載まとめ『南へ』出版=富尾記者が自費で来伯

ニッケイ新聞 2010年1月30日付け

 「取材した後、なくなられた方が何人もいる。お世話になった方に、できるだけこの手で本を渡し、お礼を言いたいと思って来ました」―。
 高知新聞社編集局社会部の富尾和方(かずまさ、35、徳島県)記者が26日に来伯、休暇を申請し、自費で本を購入して旅費を払い、10日で3カ国回る旅にやってきた。
 07年末からブラジルを中心に、亜国、パラグアイを含め約10カ月滞在し、高知県人南米移住100年をテーマに取材。08年元旦号から掲載し始め、翌09年3月まで5部に分かれて計69回の連載をした。
 帰国後も留守家族を取材し、その集大成が昨年11月に高知新聞創刊105周年を記念して『南へ(高知県人中南米移住100年)』として出版された。
 昨年は高知出身の〃移民の父〃水野龍生誕150周年でもあり、生誕の地高岡郡佐川町で記念パネルディスカッションなどが開催され、尾崎正直(まさなお)県知事を始め、東京や他県を含めた約200人が参加し、ブラジル移民への認識を深めた。
 「1年以上もやる連載は初めてだった」と充実感をもって振り返る。95年4月から翌年3月まで日伯交流協会の研修生として日伯毎日新聞で働いた経験を買われ、白羽の矢が立った。
 1958年、ブラジル移民50周年の時に同社から取材にきた記者が後に編集局長となり、退職した今も90歳近くになりながら社友として健在で、「百周年にはうちとして何かやるべきでは」と提言したことからこの企画が始まったという。
 今回、高知県で高校を卒業した西森ルイス弘志パラナ州議のはからいで、同州議会から感謝状が贈られることになった。「まったく知らなかった。とても驚いている。まだ自分にできることがあったらやりたい」と笑顔で語り、日伯交流の架け橋としての意気込みを新たにした様子だった。
 『南へ』は太陽堂書店で発売中。

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