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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2010年2月3日付け

 二宮金次郎が泣いている――。神奈川県人会の使い込み疑惑は噴飯モノだ。計76万レアルもの貴重な会資金が煙と消えた。管理のずさんさも前代未聞だ▼同県人会は05年、サンパウロ市ビラ・アマダレーナ区にあった旧会館を独断で不当に安く売却した高世整一会長(当時)を除名処分し、背任行為と公文書偽造の罪で刑事告訴したばかり。その告訴した側の現理事会が、今回の騒動を起こしたから始末が悪い▼この旧会館は、内山岩太郎神奈川県知事(当時)が賛同してポケットマネーから資金を出してくれ、1965年9月に落成した。内山氏は戦前、サンパウロ総領事、亜国公使も歴任した南米通の外交官で、戦後は政治家として活躍した。文協ビル落成が64年だから、当時は珍しく「ブラジル初の県人会館」といわれた▼その旧会館の敷地建物を売った資金で今回の新会館を購入し、使い込んだ上、新会館まで売却・・・。恩人・内山知事(故人)になんと釈明するのか▼しかも中心人物が、二宮尊徳翁の思想普及プロジェクトの実行委員長だったというからブラックジョークだ。叔父から油代がもったいないと指摘されると、荒地に菜種をまいて収穫した種を菜種油と交換し、それを燃やしてまで勉学を続けた尊徳翁の勤勉思想はどこへ▼わずか5年あまりで2回も不祥事を起こすほど人材がいないのなら、無理に活動を続ける必要はない。かつて埼玉県人会は自主解散して後、現在の会が復活し、活発に活動している経緯もある。本当に必要ならいずれ復活する。不祥事を続けて母県での世評を悪くしたり、県人会全体の評判を落とす前に、いっそ解散をお薦めする。(深)

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