ニッケイ新聞 2010年2月11日付け
イランの核開発計画を巡る欧米列強の圧力が強化される中、5月に予定しているルーラ大統領のイラン訪問にも微妙な影響が出てきたと10日付けフォーリャ紙が報じた。ロシアと中国を除く国連安保理常任理事国は、強硬姿勢を保ち非常任理事国と交渉に入った。アモリン外相は「もしイランに対する新たな制裁が採決されるなら、苦しむのはその国の弱者のみ」と声明を発表。ブラジルは非常任理事国なので拒否権を持たないが、イラン制裁は最善策ではないと抗議した。
イランのマタキ外相が「ブラジルは、それが不本意なものであっても、国連安保理の決議を呑まざるを得ないであろう。ブラジルは外交的に最善を尽くした」と謝意を表してきた。
イランは7日、国産の3・5%の低濃度ウランを国外に送り、医療レベル(20%)に濃縮して返還するという国際原子力機関の提案を改めて拒否。9日から国内での濃縮作業を開始した。
国連安保理のイラン制裁会議は、4回目になる。1945年の国連設立以来、ブラジルが非常任理事国として安保理に召集されたのは10回目になり、中間派を貫くブラジル票の権威は益々重くなっている。
イランの核開発には、四つの規制がある。その内三つは、制裁で3段階になっている。最終制裁は08年、ロシアが拒否して流産。その後満場一致の制裁決議もあったが、イランの核計画封じ込めはできなかった。
イランは03年、秘密核施設の存在がNPT(核拡散防止条約)に抵触するとして告発されたが、IAEA(国際原子力機関)でさえも存在の確認ができなかった。
米仏両国が目論む新たなイラン制裁は、最大の難関とされる中国の抱きこみに掛かろうとしている。中国はこれまで、国連安保理の決議に棄権をするが、拒否権を発動したことはなかった。
イラン制裁に関しては、ブラジルやトルコに合わせ、中国は対話継続を主張した。時間を稼ぐことで、緩やかな制裁でことを治めてきた。拒否権を持たないブラジルにとって、中国の棄権は心強い味方といえる。
当のイランは、核開発に国連から制裁を加えられても、抜け道は用意してある。ヤミ市場だ。米シンク・タンクによれば、イランの有力市場であるロシアと中国は、エネルギーと軍需産業で密接な関係がある。
イランが有する核の地下ネット・ワークは、全世界を網羅する。ヤミ市場では表市場にないものが、何でも入手できる。こうなるとヤミ市場の価格が、表市場の価額を決める。制裁は、ヤミ市場を繁盛させるだけという見方がある。