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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2010年3月5日付け

 日本政府による日系人向け帰国支援金の受付けが5日に終わる。日本の報道によれば約2万人が申し込んでいるとか。関係筋によれば5万人規模の資金を用意していたのでその半分に満たないが、日系社会からすれば「2万人も」との感想もでよう▼2月の駆け込み申請が多いので、これから帰国する人もいる。仮に1万5千人がこの制度ですでに帰国したと考えた場合、本紙が入国管理局の統計から計算したところ一昨年10月頃から約7万人が帰伯しているので、5人に一人が使った計算になる。多いか少ないか▼帰伯者が7万人なら、学齢期の児童生徒はうち2万人前後いてもおかしくない。日本で育ってポ語が不得意なまま当地の公立校に編入している可能性がある。デカセギ開始から25年が過ぎ、日伯どちらでもきちんとした教育を受けていない一世代数万人が育ったかもしれない▼一見すると日語もポ語もペラペラとしゃべるが、実は論理的な思考能力が高くなく、読み書きはどちらも不得手という〃失われた世代〃だ。ほぼ日本語のみで一世と変わりない青年もいる▼日本で生まれ育ったデカセギ子弟の居場所をコロニアの団体が提供し、ブラジル社会に羽ばたくための孵化場的な役割が果たせないだろうか。会社で雇う、団体活動に誘う、グループを作らせるなど。今の日本をよく知る世代が後継者になれば、これ以上頼もしいことはない。危機を好機にだ▼戦後移住者が20年がかりで約5万人だったことを考えれば、わずか1年半で7万人が日本から来た事実は大きい。後世からは「戦後最多の集中的移動」と称されるような激動期にいま我々はいる。(深)

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