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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2010年3月20日付け

 俄かには信じ難いのだが、生まれたばかりの乳幼児や子どもらへの虐待が次から次にと起こっている。それが―父や母親によるものだと聞けば、これはもう驚くしかない。しかも、こんな苛めと鬼畜のような親の仕打ちによって子どもらが死に追いやられている。ここまでくると、もう人間としての倫理もなく、無法の世を闊歩する悪魔に等しい▼先頃は奈良県桜井市と埼玉県蕨市で同じような事件が発生し、日本の人々はびっくり仰天し、神や仏に「助けてください」と救いを求めたそうだ。あろうことか、桜井市では、5歳の男児が飢餓による急性心不全で死亡し大騒ぎに―。新聞報道によると、身長85センチ、体重6・2キロ。手や足の関節が浮き出ており骨と皮ばかりになっていたというから驚天動地である▼蕨市のはもっと酷い。4歳の男児に食事も入浴もさせず、水も飲ませなかったので歩行もできないほどに衰弱していた。この子は乳児院に保護され元気になって親に引き渡したそうだが、これだって男の子がきちんと育てられるのかどうか?疑問視せざるをえない。桜井市の母は「夫婦仲が悪く、息 子の顔が夫に似ていて憎かった」と自供しているが、夫婦喧嘩の付けを子いびりでは、いかにもおかしい▼どうも我が祖国の社会は歪になっている。警察の調査によると、昨年の児童虐待は事件として摘発したのが過去最高の335件。(このうち28人が死亡)。この10年間で2・5倍も増えているのだから、こんな人でなしは近年になって急増したと見ていい。されど真に困った社会風潮である。(遯)

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