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野菜の素晴らしさ知って=精進料理専門家棚橋氏が来伯=28日、日本館で講演も

ニッケイ新聞 2010年3月25日付け

 世界に精進料理の心、野菜の素晴らしさを広めたい――。仏教や禅の思想から発展した精進料理の普及活動を行う棚橋俊夫さん(50、熊本)が来伯、24、25の両日、サンパウロ市のレストラン「木下」で実演・試食会を開くほか、今月28日にはイビラプエラ公園の日本館で講演(午後2時半~)する。ブラジル日本文化福祉協会の主催、国際交流基金の協力で実現した。文協ビル貴賓室で23日に行われた記者会見で棚橋氏は「野菜の凄さ、可能性を知ってもらえれば」と抱負を語った。昨年12月に発足した和食普及委員会(小池信也委員長、レストラン『藍染』オーナー)の初のイベント。

 「野菜にあいさつしてきました」―。来伯後、すぐに中央市場(メルカドン)を訪れたという棚橋さんは、「〃彼ら〃に会うことは大事なこと。素晴らしいエネルギーをもらった」とマイクを握った。
 「自然の恵みである野菜や果物に私たちは生かされている。この現実を受け止め、感謝の心をもって料理することが精進料理」と位置付ける。
 肉や魚に対しては、「食べなくても生きていけ、健康に過ごせるもの」としながらも「肉食を否定するのではなく、野菜を料理の主役に置くのが理想的」との考えを示した。
 会見開始時から、棚橋さんがすり鉢で擂っていたゴマの香りで会場は充満した。本来は正座して行うのだという。
 「精神的に落ち着く。この香りがアロマセラピーの効果もあり、体を清める精進料理で最も大事な作業」と話す。
 「野菜、果物を食べることは〃気〃をもらうことであり、供される人だけでなく、その先祖にも捧げる行為でもある」と仏教的な思想にも触れ、「保存食品やファーストフードなど〃物〃になってしまったものは気を失っている」とも。
 これまで欧米で講演したなかで「野菜だけでこんな料理ができるのか」と驚く人が多いという。 「(今回の来伯で)野菜が主役になる可能性、こういう料理ができるということを知ってもらえれば」と期待を込め、締めくくった。
 会見の冒頭、小池委員長は、「ブラジルにおける日本食の分析を通し、普及活動を行っていく」と同委員会の主旨を述べ、今後の活動として、5月にサンパウロ市の日本料理シェフの講演会、6月にハイアットホテルと共同で日本酒、すき焼きのイベントの実施を進めていることも明らかにした。
 【たなはし・としお】
 筑波大学農業経済学卒。27歳から3年間、滋賀県の禅寺で修業。
 92年、東京・表参道に精進料理店「月心居」を開く。メディアを通して精進料理の心を紹介、NHK朝の連続テレビ小説「ほんまもん」の料理監修も務める。
 08年から『是空(ぜくう)キュリナリーインスティテュート』を発足、「21世紀は野菜の時代」を掛け声に、精進料理を通じた豊かな生活を提案する活動を国内外で続けている。09年から京都造形芸術大学で教壇に立つ。

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