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エックス都市研究所がブラジルへ=食料供給などで新事業展開=元JATAK研究員 田中規子氏が嘱託に?=困惑する農協関係者ら

ニッケイ新聞 2010年6月15日付け

 本年度の農水省予算が認められなかったことから、JATAK(全国拓殖農業協同組合連合会)が事実上の活動停止状態となっていることはすでに報じた(5月22日付け)。同月21日、日系農協関係者を対象に行われた説明会では、来伯した五十嵐清一JATAK常務の「業務を引き継ぐのはエックス都市研究所らしい…」との言葉に、一同は顔を見合わせたという。そのうえ、同研究所の嘱託研究員が、JATAKを3月末で退職した田中規子氏だということが、関係者を困惑させている。同研究所に問い合わせた。

 同研究所によれば、「弊社が農水省から聞いているところでは、本事業は国際情勢の変化に鑑み、新たな食料安定供給の枠組みを南米4ヶ国との国際連携のなかで構築するための新たな事業であるとのことで、これまでのJATAK事業の継続ではない。枠組みの変更に伴い公募が行われたので応募したところ、弊社の企画提案書が採択されたと理解している」とメールで返答した。
 サイト(www.exri.co.jp)によれば、株式会社エックス都市研究所は、『都市・地域社会』『環境』を二大テーマにした71年創立の研究機関(シンクタンク)。
 農業面としては、農水省のバイオマス関連事業、JBIC(国際協力銀行)の委託事業で中国やタイでの活動も行っている。
 ブラジルに事務所は置いておらず、「現地の体制を整備するため、人員の募集等現地事務所の開設を検討中」と説明する。
 JATAKと連携してきた農協関係者は、「一億円以上の予算がつくはずだが、ブラジル側の受け入れ団体はどこなのか。全く事情が見えない」と話す。
 五十嵐常務が「危惧している」と話し、農協関係者が「大丈夫なの?」と話すのは、元JATAK研究員の田中氏が同研究所の嘱託研究員という役職を名乗っていることだ。
 同研究所は本紙の取材に対し、田中氏について「弊社の嘱託研究員という立場で活動していただくことを考えています」と答えるにとどめ、日本からの駐在員については、「現地における人員の募集・決定状況に応じて派遣等を考えている」としている。
 田中氏はJATAKを3月末に退職する前、「百年史農業編の調整役を務めているので、ビサの延長申請をしてほしい」と便宜を図るよう依頼、JATAK側も「意義がある仕事」とし〃特例〃を認めた。
 しかし、田中氏が農協関係者らに「エックス都市研究所の研究員となった」との挨拶の連絡をしたことが、公募に漏れて予算がなくなったJATAKサイドの逆鱗に触れ、現地職員が4月30日に連邦警察に出向き、延長申請を取り下げている。
 田中氏は百周年協会から、職務不履行を理由に3月初旬に調整役を、5月初旬には、原稿の未提出から執筆者としても解任された人物。
 五十嵐常務は、その仕事ぶりを「仕事のまとめが遅く、体系的に捉えられない。締め切りを守れない」と手厳しい。
 JATAKから助成を受け、事業を行ってきたブラジル農業拓植協同組合中央会(農拓協)の近藤四郎会長は、田中氏に「農拓協の口座を通じて送金は可能」と協力姿勢を見せ、「農拓協としてはどの団体とでも連携して事業を続けていきたい」と話している。
 同研究所は日系農協との今後の関係については、「本事業におけるパートナー。良好な関係を築いていきたい。本年から実施される新たな事業なので、ご理解、ご協力いただけるよう取り組みたい」としている。

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