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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2010年7月16日付け

 「伯人の握手」には非常に独特のものを感じていたが、コッパの1次リーグで南アが仏を破った直後に、満面の笑みを浮かべた伯人のパレイラ南ア監督が、仏代表監督に握手を求めにいって拒否されたシーンはなにか象徴的だった。パレイラはそれでも食い下がり、「なぜ握手をしない」とばかりに肩をつかんでこちらを向かせる。その様子を放送したグローボ局は「仏代表監督はセン・エドゥカソン(教育がない)」と批判を浴びせた▼伯人は勝敗に関係なく試合後にはお互いの健闘を祝って「握手」をすることを信条としている。くだんの仏代表監督はそれに反したから、試合に負けたことに加え、スポーツマン精神の面でも重ねて批判を浴びた▼伯仏両国は比較的に言語も生活文化も近いが、かたやフランス革命を成し遂げた永遠の文化の都であり、戦前に留学と言えば大半が仏だったと聞く。その意味で伯人エリートにとっては常に劣等感を抱く対象であり、パレイラの振る舞いで溜飲を下げたに違いない▼「伯人の握手」の特異性を強く感じるのは、どんなライバルとでも仲良さそうに握手することだ。まるで挨拶が最後の意思疎通手段であり、これを絶つことは「戦争開始」を宣言するかのようだ。現実に殺人犯罪も多い国だからこそ、握手で相手との距離を図ることは生活の知恵なのか▼さきのイランによる濃縮ウラン問題の時も、一刻も早く制裁決議を出そうとする米国に対し、伯国とトルコは「孤立させるのはよくない」と最後までコミュニケーションにこだわった。当国特有の〃握手〃が外交レベルにまで昇華したようにみえた。(深)

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