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■記者の眼■〝消えた高齢者〟伯国に?=移民と関係深い問題か

ニッケイ新聞 2010年8月27日付け

 「今度は龍馬より年上『186歳』 140歳超続出 山口」など、ひやかし半分の見出しが躍る。日本国内では〃消えた高齢者〃問題が盛んに話題になっているが、実は移民にも深い関係のある話題だ。

 西日本新聞26日付けによれば、「大分県では、150歳以上3人を含む少なくとも約800人の120歳以上が、戸籍に残っていることが各自治体の調べで判明」と特に多いようだ。同記事は、「120歳以上14人が見つかった大分県日出町では、ブラジルへの移民が多く、最後の住所がブラジルになっている人もいるという」と締め括られている。
 在聖総領事館戸籍国籍班の田中寿径領事に問い合わせたところ、たとえ笠戸丸移民でも死亡届が出されていなければ戸籍上はそのままになっている、という。「02年から領事出張サービスなどを行い、死亡届、婚姻届などを出してくださいという運動をしている。それによって、かなりの数の届け出を受けたが、それでもまだ出されていない件数がある。引き続き働きかけていきたい」とのべた。
 つまり渡伯時に30歳だった笠戸丸移民で、遺族から死亡届が出されていなければ、現在、日本の本籍地の戸籍上では132歳として登録されているはずだ。
 戦前などに奥地に入植した日本移民にとって、領事館に届けを出すことは、数日がかりの大仕事であった。またバウルー総領事館が火災に見舞われて書類が焼失したこともあり、戦争中は日本移民の移動が制限され、サルボコンドゥト(移動許可書)がなければ、出聖することもままならない時代だった。その上、1942年以降、日本国外交官が総撤退していた。
 このように日本国内とはまったく異なる事情があった。日本のメディアがこの問題で移民関係を扱うなら、最低限このへんの事情は知った上で報道して欲しい。
 戦後、領事事務は通常どおり行われたが、その間の〃穴〃が埋められた保証はない。ただし、90年以降、デカセギ・ブームによって、二世、三世の訪日が激増したことに伴って、訪日ビザに必要な一世の戸籍整理はかなり進んだ。
 それに加え、00年から在外選挙が開始され、在外選挙人登録を進める必要もあって、在聖総領事館では02年から積極的に、領事出張サービスに取り組んでいる。
 特に05、06年には年間30カ所も訪問、昨年でも10カ所を訪れ、あわせて戸籍整理の呼びかけをしている。いま急に盛り上がった日本国内の〃消えた高齢者〃問題は、以前から当地では認識されていた。
 在聖総領事館では、戸籍上の最高齢者は明らかにしないが、日本同様に130歳程度がゴロゴロいてもおかしくない。日本国内でも関心が高まったこの機に、各地の文協なども協力して、亡くなった一世の戸籍整理を子孫に呼びかける必要があるのではないか。(深)

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