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サンタクルス病院=菜切理事長が突如辞任!=医師協会とのあつれきか=銀行負債は2600万レ=食い違う中矢氏の〃見解〃

ニッケイ新聞 2010年9月24日付け

 1939年の落成以来、戦時中の接収から90年の返還まで手を離れた時期はあったものの、日本語が通じるコロニアの病院であり続けたサンタクルス病院が今、揺れている。同病院に勤務する医師らが給料の遅配や運営方針に疑問を呈する質問状を理事会宛に提出したことを受け、09年に就任した菜切健児理事長が9月3日付けで辞任。先月の会計報告では、2600万レアルの銀行負債が報告されていることから同医師会は経営危機をも指摘するなど、内部的あつれきが深刻化しているようだ。一方、新理事長に就任した中矢レナット氏は、「医師会とは話し合いが済んでいる」と本紙の取材に答えているが…。関係者に話を聞いた。

 現在、銀行に対する負債が約2600万レアル(07年時1700万レ)に膨れ上がっている。その金額は明らかになっていないが、多くがPLASACからの未回収分のようだ。
 なお、20日にあった理事会では、他の保険プランも含め、900万レアルの未回収金が報告されている。
 「08年末から病院内のシステムのコンピュータ化を進めたことで、会計事務に混乱が起きている」と某理事は説明する。
 同じ理由で医師への支払いも遅れており、これが今回の13項目に渡る質問状提出に繋がったようだ。
 質問状を作成した医師会の代表は、「菜切氏が立場を利用し、患者を優先的に自分の医院で診察させるなどの利益誘導がある」とし、理事らの汚職の可能性も示唆する。
 それに対し、「コンピュータ化に反対するのは、既得権益の問題が絡んでいる」とある理事は反論する。
 「病院で長く働いている医師らにとっては、非常に困ること。今までは色々業者に〃便宜〃を図ってもらっていたことが、針一本まで管理されることになるわけですから」と過渡期の問題であると解説した上で、菜切氏の手法にも疑問符をつける。
 「彼はとても真面目。理想や目的は正しいのだが、改革の前に人心を掴んでいなかったことが問題」と分析する。
 菜切氏はすでに回答を作成、理事会に提出している。本誌の取材には「理事会に一任しており答えられない」とするに留まった。
 「絶対に潰さないし、潰れない」。会計業務に明るい担当する理事は、そう鼻息を荒くする。
 「銀行は企業の総請求額(月)の3倍までの負債は健全ではないが安全と見る。サンタクルスは約1200万レだから、負債額は2倍強。システム不備の問題が解決すれば、問題ない」と自信を見せる。
 続けて、「利用者にとって便利になるよう執行部が全力をかけて経営改善に励んでいる。心配しないで欲しい」とコロニアに呼びかける。
 しかし、22日に日本から帰国、菜切氏に代わり理事長に就任した中矢レナット氏は、「医師会とはすでに話し合いが済んでいる。何の問題もない」と首をかしげる。
 先の医師会の代表に確認すると、「彼の帰国も知らないし、話し合いなどない」と〃見解〃の食い違いを見せている。
 中矢氏は23日に記者会見を行うとしている。

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